時間外労働(読み)ジカンガイロウドウ

精選版 日本国語大辞典 「時間外労働」の意味・読み・例文・類語

じかんがい‐ろうどうジカングヮイラウドウ【時間外労働】

  1. 〘 名詞 〙 労働基準法や労働協約などで定められている時間をこえて行なわれる労働や、休日に行なわれる労働。時間外勤務。超過勤務
    1. [初出の実例]「時間外労働の割増金」(出典:武州このごろ記(1935)〈北条清一〉川口の労働運動)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「時間外労働」の意味・わかりやすい解説

時間外労働
じかんがいろうどう

労働基準法(労基法)や労働契約(会社が定めた就業規則や会社と労働組合との間で締結された労働協約)で定められた時間を超えて行われる労働。

 労基法第32条は、1日8時間、1週40時間を超えて働かせてはならないとしているが、それを超えて働かせることを「法定時間外労働」という。一方、労働契約で定められている労働時間(たとえば労働時間が1日7時間)を超えて働かせることを「所定時間外労働」とよぶ。「法定時間外労働」に対しては、時間外労働をした時間当りの賃金に割増賃金率(25%以上)をかけた額を支払わなければならない(労基法第37条1項)。なお、月60時間を超える時間外労働については、50%以上の割増賃金率をかけた額を支払わなければならない(同条1項但書。2023年4月1日から中小企業も含むすべての使用者が対象となった)。一方、「所定時間外労働」の場合は、法定労働時間内(1日8時間、1週40時間)に収まる残業(たとえば労働時間が1日7時間となっている会社で1時間残業するような場合)については、割増賃金の支払いは不要で、その時間当りの賃金を支払うことで足りる。これを「法定時間内残業」とよぶ。「法定時間外労働」において労働時間の一部または全部に対して賃金または割増賃金を支払うことなく労働を行わせる、いわゆる賃金不払残業(サービス残業)は労基法第37条違反であり、使用者には6か月以内の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められている(労基法第119条1号)。

 一方、労基法では、次の二つの場合に法定時間外労働が認められている。一つは、災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合で、行政官庁許可を受けた場合(事態急迫の場合は事後承認でも可)である(労基法第33条1項)。具体的には、地震、津波、風水害、雪害、爆発、火災などの災害への対応、急病への対応、事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械・設備の故障の修理、などである(基発0607第1号・令和元年6月7日)。もう一つは、労基法第36条に基づいて、事業所単位で使用者と過半数の労働者で組織する労働組合、あるいは過半数組合が存在しないときは労働者の過半数を代表する者とが書面による協定(三六(さぶろく)協定)を締結し、所轄の労働基準監督署長への届出を行った場合である。

 三六協定で定めることのできる時間外労働の限度については、従来、時間外労働の限度基準(平成10年厚生労働省告示第154号)によって定まっていた。しかし、「特別条項付き三六協定」を締結すれば、労働時間を延長しなければならない特別の事情がある場合は、この限度時間を超えた時間外労働が可能であった。そのため、事実上、青天井で時間外労働をさせることが可能となり、長時間労働が助長されることとなった。その結果として、「過労死」が社会問題となり、長時間労働の抑制が社会的な課題となった。そこで働き方改革関連法(正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」。平成30年法律第71号)による労基法改正に伴い、大企業は2019年(平成31)4月1日から、中小企業は2020年(令和2)4月1日から罰則つきで法律に時間外労働についての上限規制が定められた。原則として、週40時間を超えて労働可能となる時間外労働の上限は、月45時間、かつ、年360時間を上限とする(労基法第36条4項)。しかし、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を締結した場合には、特例として年の上限が720時間となる(労基法第36条5項)。ただし、労使協定を締結した場合でも、上回ることのできない上限として、①2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで80時間以内、②単月では、休日労働を含んで100時間未満、③原則を上回る特例の適用は年6か月が上限、と設定されている。これらの基準を超えて時間外労働をさせた場合は労基法第36条違反となり、使用者には6か月以内の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められている(労基法第119条1号)。

[天野晋介 2026年1月20日]

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改訂新版 世界大百科事典 「時間外労働」の意味・わかりやすい解説

時間外労働 (じかんがいろうどう)

労働保護立法または労働協約の定める標準労働時間(労働時間)を超える労働。1日の所定時間を超える残業・早出と,休日出勤とがある。日本の労働基準法は〈休憩時間を除き1日について8時間,1週間について48時間を超えて,労働させてはならない〉(32条)と定めているが,他方36条で,この限度を超える時間外労働が,労働組合または〈労働者の過半数を代表する者〉との〈書面による協定〉(三六協定)で可能とされている(ただし18歳未満の年少労働の残業は禁止)。時間外労働の上限は,女子についてのみ定められている(1日2時間,週6時間,年150時間。〈児童労働・年少労働〉および〈女子労働〉の項参照)。成人男子については法定されていないが,この点は日本がILO1号条約(1919)を批准できない理由の一つでもある。

 日本では,残業なしで帰る曜日をとくに定めて〈健康日〉〈衛生日〉とよぶなど,残業が恒常化されている産業が多い。つまり法定標準労働時間+恒常的残業が実際の標準労働時間となっており,したがって残業収入が月収の不可欠の部分となっている。

 時間外労働に対しての割増賃金支払が,余暇の犠牲や疲労の加速度的増大に対する補償を労働者に行う意味で,また使用者に対して長時間労働をコスト面から規制する意味で行われる。割増率は先進国では25~50%がかなり多く休日は100%が通例だが,日本では労働基準法の定める25%かせいぜい30%増しが通例であり,企業に対する残業規制的効果はまったくない。なぜなら,福利費用はもちろん賃金のうちのボーナスや家族手当・通勤手当などは割増算定の基礎に入らないので,増員によるよりも残業によるほうが労務コスト増がずっと少ないからである。また残業をしても賃金がまったく払われない〈サービス残業〉〈風呂敷残業・持帰り残業〉や法内残業(協約による所定時間が法定のそれを下回る場合の法定基準までの労働)に対しての不払いや低額の賃率支払もかなりある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「時間外労働」の意味・わかりやすい解説

時間外労働
じかんがいろうどう

法律で定められた1週あるいは1日の最長労働時間 (労働基準法 32,40) をこえて行われる労働。使用者は,災害その他避けることのできない理由によって臨時の必要がある場合に労働基準監督署長の許可を得るか,または労働者代表と時間外協定を締結し労働基準監督署に届け出れば,それぞれ法定の労働時間を延長しうる (→三六協定 ) 。いずれの場合でも,通常の労働時間または労働日の賃金計算額の2割5分以上の割増し賃金を支払わなければならない (37条) 。

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生活習慣病用語辞典 「時間外労働」の解説

時間外労働

時間外労働は、仕事による負担を大きくするだけでなく、睡眠・休息の機会を減少させるために、疲労蓄積の重要な原因のひとつとされています。月45時間を超える場合、労働時間の短縮を検討する必要があります。

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世界大百科事典(旧版)内の時間外労働の言及

【深夜業】より

…労働者の心身の負担が大きいため禁止・規制・特別の保護を必要とする時間帯の労働。時間外労働(残業)が長引いた際および交替制勤務において深夜業が問題となる。労働基準法では午後10時~午前5時を深夜として,25%の割増賃金支払義務や年少者と女子の就業禁止(10時半終業の交替制は可)を定めている。…

※「時間外労働」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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