ブリトン人(読み)ぶりとんじん(英語表記)Britons

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブリトン人」の意味・わかりやすい解説

ブリトン人
ぶりとんじん
Britons

ブリテン島のケルト系先住民の総称。旧石器時代より人類生息の跡があるが、紀元前3000年ごろイベリア半島から南西イギリス巨石文化を伴う新石器文化をもった人々が渡来し、前1800年ごろビーカー型の土器を用いる原ケルト系のビーカー人がラインラントから青銅器文化をもたらした。さらに前7世紀にハルシュタット文化、前4世紀にラ・テーヌ文化という鉄器文化をもつケルト人が渡来。前1世紀にはローマ文化の影響を受けたケルト系ベルガエ人Belgaeが優秀な鉄器文化をもって南東イギリスに渡来、建国した。本来ベルガエ人をブリタニBritanniとよび、ブリテン島の住民をプレタニPretaniとよんでいたが、ローマの将軍カエサルがガリア遠征のときブリテン島を「ベルガエ人(ブリタニ)の島」とよんでから、ブリテン島の住民をブリタニ、すなわちブリトン人とよぶようになる。5、6世紀、ゲルマン民族一派アングロ・サクソン人が移住してきたとき、ケルト系ブリトン人はウェールズアイルランドスコットランドに追われたが、一部は北西フランスに渡って今日のブルターニュ地方を形成した。

[富沢霊岸]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ブリトン人」の意味・わかりやすい解説

ブリトン人 (ブリトンじん)
Britons

インド・ヨーロッパ語系諸族のうちのケルト人の一派でキムリ人Cymryともいう。前4~前2世紀にヨーロッパ大陸からグレート・ブリテン島南部に移動し,多数の小部族王国をつくって定着した。ブリタニア(ブリテン島)の名は彼らに由来する。紀元1世紀半ば以後ローマの支配に服し,5世紀前半ローマの衰亡とともに再び自立したが,5世紀半ば以後,アングロ・サクソン人侵入に圧せられて,西部に居住する者を除いてその支配下に入った。今日彼らの血が濃密に残る地方としては,イギリスのウェールズ,コーンウォール,北フランスのブルターニュなどがあげられる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「ブリトン人」の意味・わかりやすい解説

ブリトン人【ブリトンじん】

インド・ヨーロッパ語族のうちケルト人の一派で,前4−前2世紀にヨーロッパ大陸からグレート・ブリテン島に渡来。多くの小部族国家をつくったが,紀元1世紀にローマの支配に服した。ブリタニアというローマの属州としてのグレート・ブリテン島の呼称は彼らに由来する。ローマの撤退後自立したが,5世紀以降アングロ・サクソン人の侵入に圧迫されて西部に移動し,ウェールズ,コーンウォールさらに北フランスのブルターニュ半島に,いわゆる〈ケルト人の住む周縁〉を形づくっている。
→関連項目ブリタニア

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブリトン人」の意味・わかりやすい解説

ブリトン人
ブリトンじん
Britons

イギリスの先住民族。ケルト系。前5~3世紀に大陸よりブリテン島に渡来。ローマ人によりプリタニ (入墨を施した者) と呼ばれたが,当時対岸の北ガリアに居住するブリタニと混同され,ブリタニ (ブリトン人) と呼ばれるにいたった。1世紀以降ローマに征服され,5世紀なかば以後アングロ・サクソン人に征服された。現在ウェールズ,コーンウォール,スコットランド,北フランスのブルターニュに住む人々の祖先。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ブリトン人」の解説

ブリトン人(ブリトンじん)
Britons

ケルト人に属するブリテン島の先住民族。1世紀以後ローマの支配を受け,5世紀以後はアングロ・サクソンによって征服され,一部はウェールズ,アイルランド,北フランスのブルターニュ方面に移った。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のブリトン人の言及

【アングロ・サクソン人】より

…北西ドイツを原住地としたサクソン人,ユトランド半島基部に住んだアングル人,同半島に居住したジュート人などいくつかの部族の混成体。ゲルマン民族大移動の一環として,5~6世紀に原住地からブリタニアの島に移動し,先住民族ブリトン人を駆逐または支配して現在のイングランド(〈アングル人の地〉の意味)の地を占拠した。はじめ7~10の小王国に分立して争ったが,9世紀ころから次第に一つのイングランド王国にまとまった。…

【イギリス】より

… 前8,前7世紀ころからインド・ヨーロッパ語族の言語を使用するケルト人が渡来し,鉄器文化をもたらし,先住民族を征服して住みついた。彼らは大別して前7~前5世紀に来たゴイデル人(ゲール人)と,前4~前2世紀に移り住んだブリトン人(キムリ人)から成り,後者からブリタニア(ブリテン)の名称が由来した。彼らは多数の部族に分立したが,その社会は神事をつかさどる聖職者(ドルイド)と広大な土地を所有する戦士が貴族として支配階級を構成し,一般の農民を収奪した。…

【ウェールズ】より

…また宗教も英国国教会から分離し,メソディスト派が中心である。【長谷川 孝治】
【歴史】

[異邦人の国]
 ウェールズには先史時代からケルト系のブリトン人(キムリ人)の小部族が分立していたが,1世紀後半以後ローマの支配下に入った。5世紀初めローマの支配が終わると,再び分立に立ち返り,北部のグウィネッズ,中東部のポーイズ,南西部のディベッドなどの王国が有力となった。…

※「ブリトン人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android