ヘダイ(読み)へだい(その他表記)goldlined seabream

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘダイ」の意味・わかりやすい解説

ヘダイ
へだい / 平鯛
goldlined seabream
[学] Rhabdosargus sarba

硬骨魚綱スズキ目タイ科ヘダイ亜科に属する海水魚。北海道以南の日本海沿岸、東シナ海、宮城県以南の太平洋沿岸、屋久島(やくしま)、琉球(りゅうきゅう)列島、朝鮮半島南岸、中国の青島(チンタオ)~トンキン湾、オーストラリア東岸~南西岸、アラビア海、ペルシア湾、紅海、南アフリカ東岸などに広く分布する。体形はタイ形でよく側扁(そくへん)し、体が短くて体高が高い。吻(ふん)の外郭は丸みを帯びる。両顎(りょうがく)前部に各6本ずつの門歯状犬歯があり、側部に3列の臼歯(きゅうし)が並ぶ。そのうち、奥の3本の歯は楕円(だえん)形で、強大である。背びれ棘(きょく)部の中央下の横列鱗(おうれつりん)数は6.5枚以上。背びれと臀(しり)びれの棘は短く、それほど太くない。臀びれの基底は長い。背びれ軟条数は13本で、臀びれ軟条数は普通は11本。側線鱗の管は太い。側線鱗数は53~63枚。同じ亜科のクロダイ類やキチヌ類は臀びれ軟条数が8本であること、背びれ棘と臀びれ棘が太くて強いことなどで簡単に区別できる。最大の全長は約50センチメートルで、普通は40センチメートル。体は淡青色を帯びた鮮やかな銀灰色で、腹部は銀白色。体側には鱗列に沿って多数の黄灰色縦走帯がある。腹びれと臀びれは鮮黄色を帯びる。沿岸岩礁域や浅海底層に生息する。肉食魚で、おもに貝類棘皮動物、多毛類などを食べる。産卵晩春河口域近くで行う。卵径およそ1ミリメートルの分離浮性卵。幼魚は内湾や河口域でもみられる。一本釣り、定置網底引網で漁獲される。白身の肉でクロダイほど磯(いそ)臭くない。刺身、塩焼き、煮つけなどにして賞味される。

[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年9月19日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ヘダイ」の意味・わかりやすい解説

ヘダイ (平鯛)
silver bream
Sparus sarba

スズキ目タイ科の海産魚。本州中部以南,西部太平洋,インド洋に広く分布する。浜名湖でコキダイまたはマンダイ,沖縄でチバー,高知でヒョオゴ,字和島でヘエマジルなど多くの地方名がある。タイ類の一種で,両あごの前部に門歯状の犬歯をもち,両あごの側部には約3列の臼歯(きゆうし)をもつ。全長45cmに達する。体は淡青色を帯びた銀白色で,腹側は淡い。各うろこの中心には黄褐色の部分があり,これが前後に連続し黄褐色線状に見える。腹びれとしりびれは黄色。沿岸性の魚で,ときに内湾にも入ってくる。肉食性で貝類,甲殻類,多毛類,棘皮(きよくひ)動物などを食べる。産卵期は4~6月で,球形浮性卵を産む。卵は直径約1.0mm。一本釣り,定置網,底引網,刺網などで漁獲する。刺身,塩焼き,煮つけなどにする。磯くささがなく,クロダイなどより美味である。近年増養殖事業の発達により,マダイなどとともにヘダイの種苗生産の研究が行われている。
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