日本大百科全書(ニッポニカ) 「マダイ」の意味・わかりやすい解説
マダイ
まだい / 真鯛
red seabream
[学] Pagrus major
硬骨魚綱スズキ目タイ科マダイ亜科に属する海水魚。北海道以南の日本海と太平洋の日本各地の沿岸、東シナ海、台湾や朝鮮半島沿岸、南シナ海に分布する。奄美(あまみ)大島や沖縄諸島海域では少ない。体は楕円(だえん)形で強く側扁(そくへん)し、体高の高い典型的なタイ形である。両顎(りょうがく)前部には2、3対の犬歯がある。側部には2列のやや大きい臼歯(きゅうし)があることで、臼歯がないキダイ亜科と区別する。全長1メートル以上。臀(しり)びれ軟条は8本。体は鮮赤色で、腹部は淡紅色。体側に小さい青緑色点が不規則に数列散在する。尾びれ後縁の黒いのがマダイの特徴。日本沿岸や大陸棚の水深30~200メートルの外洋の底層に生息する。4~6月に、水温が15℃以上になると産卵のため接岸し、夕刻に産卵する。この時期にとれるものはサクラダイとよばれ美味である。1尾の雌は30万粒以上産卵する。卵径約1.2ミリメートルの分離浮性卵で、20℃では約2日で孵化(ふか)する。稚魚・幼魚は内湾や沿岸の藻場(もば)や砂礫(されき)帯で生育し、カイアシ類、エビやカニ類の幼生を食べる。2~3年経つと深みに移動する。1年で尾叉長(びさちょう)14センチメートル、3年で24センチメートル、8年で48センチメートル、16年で78センチメートルほどになり、1メートルぐらいになるのに20年以上かかる。寿命は20~40年。おもに多毛類、甲殻類、イカ類、棘皮(きょくひ)動物、魚類などを好む。一本釣り、延縄(はえなわ)、定置網、底引網、ごち網などで漁獲される。肉は白くてよくしまり、刺身、吸い物、塩焼き、煮つけなどで賞味されるほか、でんぶなどに加工される。
マダイの漁獲量は1971年(昭和46)を除いて1972年までは2万トン以上あったが、それ以後は1万3000~1万8000トンの間で推移し、2015年(平成27)では1万5000トンほどであった。そのうち約32%は長崎県、福岡県、山口県で漁獲されている。また、マダイの養殖は統計的には1961年に始まり、生産量は約2トンであった。1970年に460トン、それ以後はしだいに増加し、1999年(平成11)に8万7000トンと最多量となった。それ以後は6万~8万トン台の間で推移し、2015年では6万3000トンほどであった。しかし2015年の養殖生産量は漁獲量の4倍あまりに達している。養殖量の約80%は愛媛県、熊本県、高知県で生産されている(農林水産省「平成27年漁業・養殖業生産統計」による)。ほぼ各県の水産試験場で種苗生産が行われて、稚魚が放流されている。近縁種に南半球のゴウシュウマダイがあり、マダイと同様に尾びれ下縁先端が白い。両者は背びれ第1棘と臀びれ第1棘の長さに差異が認められるが、きわめて小さい。両種を亜種(マダイPagrus auratus majorとゴウシュウマダイPagrus auratus auratus)または同種(Pagrus auratus)とする研究者もいる。
[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年9月19日]