ヘリオトロープ(英語表記)common heliotrope
Heliotropium peruvianum L.

デジタル大辞泉 「ヘリオトロープ」の意味・読み・例文・類語

ヘリオトロープ(heliotrope)

ムラサキ科小低木。葉は楕円形で先がとがる。春から夏にかけて、強い芳香のある紫または白色小花を総状につける。また、園芸上は同科ヘリオトロピウム属の数種をさし、花が紫色ニオイムラサキなどがある。ペルー原産で、花から香油をとり、また観賞用に栽培。木立瑠璃草きだちるりそう香水草。 春》
1の花から製した香料・香水。
血石

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精選版 日本国語大辞典 「ヘリオトロープ」の意味・読み・例文・類語

ヘリオトロープ

〘名〙 (heliotrope)
① ムラサキ科の低木。ペルー原産で、観賞用に温室で栽培される。全体に剛毛が生えてざらつく。葉は互生で、短い柄があり、楕円形で先端はとがる。四季を通じ、枝の先端に径三ミリメートルぐらいの黄紫色の佳香の強い小花を密生する。花の芳香成分は香水の原料とされる。きだちるりそう。《季・春》
邪宗門(1909)〈北原白秋〉魔睡・室内庭園「そのもとにあまりりす赤くほのめき、やはらかにちらぼへるヘリオトロオブ」
② ①の花からとった香料・香水。
※青春(1905‐06)〈小栗風葉〉春「『兄さんが香水を買って来てくれるなんて、私も始めてなのよ』〈略〉『ヘリオトロップね』」
③ 鉱物名の一つ。濃緑色で朱斑のある玉髄。宝石に準じ装身具に使う。三月の誕生石。血石。ブラッドストーン

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改訂新版 世界大百科事典 「ヘリオトロープ」の意味・わかりやすい解説

ヘリオトロープ
common heliotrope
Heliotropium peruvianum L.

ペルー,エクアドル原産のムラサキ科の小低木。日本には明治の中ごろに渡来し,コウスイボク香水木),コウスイソウ(香水草),キダチルリソウ木立瑠璃草)とも呼ばれる。花を香水の原料とする。植物体は高さ50~70cmで,枝には剛毛がある。葉の表面は葉脈に沿ってひだがあり,裏面には白毛が生えている。花は長さ3mmほどで密集してつき,紫色ないしすみれ色から,日時がたつと白色に変わる。特有の芳香がある。繁殖は挿木による。冬期10~15℃の温室ではよく生育し,冬から咲き始めて夏から秋まで続く。株を生かしておくだけならば5~7℃でも越冬できる。なお最近ヘリオトロープと称して出まわっている鉢物は,多くは近縁のニオイムラサキH.corymbosum Ruiz et Pav.である。

 ヘリオトロープの香水は高級香料として子女に親しまれ,夏目漱石の小説《三四郎》にも出てくる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘリオトロープ」の意味・わかりやすい解説

ヘリオトロープ
へりおとろーぷ
heliotrope
[学] Heliotropium

ムラサキ科(APG分類:ムラサキ科)ヘリオトロピューム属の数種の園芸上の呼び名。現在一般的にはニオイムラサキH. arborescens L.(H. corymbosum Ruiz et Pav.)が栽培される。ペルー原産の小低木で、高さ約1メートル。葉は互生し、広楕円(だえん)形で先はとがり、暗緑色。5~9月、分枝した茎頂に総状花序をつくり、濃紫色または淡紫色の小花を開く。普通、温室内で栽培し、鉢植えにして観賞する。またキダチルリソウH. peruvianum L.はペルー原産の小低木で、日本でヘリオトロープと称して古くから栽培されてきたがニオイムラサキと同一種である。コウスイソウ(香水草)、コウスイボク(香水木)ともいい、花は前種に比べるとやや小さいが、芳香が強く、香油をとる。繁殖は普通、秋または春に、排水のよい肥沃(ひよく)地に挿芽をし、冬季は5℃以上に保つ。

[山口美智子 2021年7月16日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘリオトロープ」の意味・わかりやすい解説

ヘリオトロープ
Heliotropium peruvianum; heliotrope

ムラサキ科の常緑小低木で,ペルー原産。和名キダチルリソウ。香料,観賞用として栽培され,日本では温室栽培をする。高さ 1mぐらいのややざらついた茎が立ち,互生する葉は楕円形で先がとがり,茎と同様に長い毛がある。花は枝先に多数つき白色か青紫色の小花で,花筒の上部は5裂して直径 3mmぐらいになる。花には強い芳香があり,これからとる香油は香料として有名なヘリオトロープ油である。根には有毒物質が含まれているという。香水草,香水木の名もある。なお,同属の植物は中南米を中心に 100種あまりも知られている。

ヘリオトロープ

血石」のページをご覧ください。

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色名がわかる辞典 「ヘリオトロープ」の解説

ヘリオトロープ【heliotrope】

色名の一つ。JISの色彩規格では「あざやかな青紫」としている。一般に、ムラサキ科の小低木ヘリオトロープの花のような明るいをさす。夏から秋にかけて芳香性の小さな花を咲かせる。原産地はペルー。観賞用の花として栽培されるが、香りがよいことから香水にも利用される。太陽の光に反応し葉や茎が太陽の方向に向かって伸びる向日性植物で、ヘリオトロープも元は向日性という意味であった。

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百科事典マイペディア 「ヘリオトロープ」の意味・わかりやすい解説

ヘリオトロープ

キダチルリソウとも。ペルー原産のムラサキ科の小低木。高さ50〜70cmになり,葉の裏面には毛があって,白っぽい。花は枝先に集まり芳香が強い。花冠はすみれ色,径4〜7mmで5裂し,下部は筒形。園芸品種には花色が白,青色のものもある。温室内では冬から開花。花の芳香成分は香料とされたが,現在は主として合成香料が用いられる。ふつう鉢植にして温室で育て,さし木でふやす。

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世界大百科事典(旧版)内のヘリオトロープの言及

【多発性筋炎】より

…筋肉痛も高頻度に生ずる。皮膚筋炎の場合の皮膚症状は紅斑から落屑(らくせつ)性変化までさまざまであるが,特徴的なのはヘリオトロープと呼ばれる眼瞼・頰部・前額部・爪周囲などの紫紅色の変化である。またとくに高齢男性患者に悪性腫瘍を伴うものが多く,筋症状の発現後1~2年してから見つかることがあるので注意を要する。…

【ブラッドストーン】より

…そのためブラッドストーン(血石)の名称が与えられている。古くはヘリオトロープheliotropeとも呼ばれた。沈着,勇敢,聡明を象徴し,アクアマリンとともに3月の誕生石として昔から珍重されている。…

※「ヘリオトロープ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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