改訂新版 世界大百科事典 「ホッキョクギツネ」の意味・わかりやすい解説
ホッキョクギツネ (北極狐)
Arctic fox
Alopex lagopus
北極圏にすむ,冬毛がふつう全身白色になるキツネに似た食肉目イヌ科の哺乳類。もっとも耐寒性に優れた,艶のある美しい毛皮をもつ哺乳類として名高い。体軀(たいく)はキツネに似るが,頭骨のつくりと,長く,スマートな四肢はイヌに似ており,両者の中間的な位置にある動物と考えられる。耳は丸い。体長45.8~67.5cm,尾長22.5~42.5cm,体重1.4~9kg。体色には,夏毛が茶色で,冬毛が白色になるものと,少数ではあるが,冬毛が白色にならず灰色から赤褐色,さらにはほとんど黒色の,暗色系のものとの二つのタイプがある。前者をシロギツネ(英名white fox),後者をアオギツネ(英名blue fox)と区別して呼ぶことがある。毛皮としては後者の価値が高い。
北は北緯88°から,南はグリーンランド,アイスランド南端までに分布。ハドソン湾南部にもすむ。雌雄が永続的なつがいをつくり,おもにネズミ類(レミング)や鳥を捕食する。冬にはホッキョクグマにつき従い,食べ残しをあさったり死肉を食べる。3~5年のレミングの個体数増減の周期に影響されて,数が増減する。雌は4~7月に,1産2~25子,ふつう6~12子を生む。産子数の幅が大きいが,獲物の量に関連するらしい。ロシア,北欧を中心に大量に養殖されている。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報