ボタンエビ(英語表記)Pandalus nipponensis

改訂新版 世界大百科事典 「ボタンエビ」の意味・わかりやすい解説

ボタンエビ
Pandalus nipponensis

十脚目タラバエビ科の甲殻類。食用エビで,体長14cmほどに達する。生きているときはやや濃い橙赤色で,頭胸甲の背隆起のとげと額角(がつかく)中央部付近が赤い。この体色から,この名がついたと思われる。また,第1~5腹節の側面に各2個の不規則な赤い斑紋がある。額角は頭胸甲の1.5倍内外で,上縁に17~20本(頭胸甲上に7~9本)の可動棘(かどうきよく),下縁に7~10本の不動棘がある。第1胸脚は棒状で,長節の末端部がわずかに板状になる。第2胸脚は細く,腕節が多数の小さな節に分かれているが,左右で長さが異なる。タラバエビ科の他種と同様に雄性先熟の性転換をするため,大型個体はすべて雌である。産卵期は2~5月と推定される。卵は灰緑色で,産卵直後は長径2.7mmほど。頭胸甲長3.8~4cmの雌の卵巣の卵数は720~1140粒である。日本特産種。日本海には生息せず,北海道内浦湾から土佐湾までの水深300~500mの泥底にすむが,北にいくほど浅くなる。機船底引網で多量に漁獲される。肉は甘味があっておいしい。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボタンエビ」の意味・わかりやすい解説

ボタンエビ
Pandalus nipponensis

軟甲綱十脚目タラバエビ科。体長 13~15cm。体は濃い黄赤色で,体側に不規則な赤色斑が散在している。額角は頭胸甲長の 1~1.5倍で,上縁に 17~20本,下縁に 7~10本の可動棘と先端部下縁に 0~2本の不動棘がある。雄性先熟雌雄同体で,孵化後 1年目は幼若,2年目は雄,3~4年目の体長 12~13cmのときに性転換して雌になる。卵は青緑色で約 500個。雌が 1年間抱卵する。日本海には分布せず,北海道の内浦湾以南から高知県の土佐湾までの水深 300~500mから機船底引網で多量に漁獲される。北海道ではトヤマエビをボタンエビと呼んでいる。(→甲殻類十脚類節足動物軟甲類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボタンエビ」の意味・わかりやすい解説

ボタンエビ
ぼたんえび / 牡丹蝦
Botan shrimp
[学] Pandalus nipponensis

節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目タラバエビ科に属するエビ。水産業上の重要種。土佐湾から北海道の内浦湾にかけての水深300~500メートルに分布する日本固有種で、10月から翌年5月まで機船底引網で多量に漁獲される。体長20センチメートルを超える大形種で、濃い黄赤色に不規則な赤色斑(はん)がある。額角(がっかく)は頭胸甲長の1.5倍に達し、上縁の後半部と頭胸甲上に17~20本の可動棘(きょく)、下縁に7~10本の不動棘をもつ。第2胸脚は左右で長さが異なり、腕節は多数に分節する。ほかのタラバエビ類と同様に雄性先熟の性転換をするので、大形個体はすべて雌である。抱卵数は700~1000個である。

武田正倫]


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百科事典マイペディア 「ボタンエビ」の意味・わかりやすい解説

ボタンエビ

甲殻類タラバエビ科のエビ。体は淡紅色で,濃い紅色の斑紋を有し美しい。額角(がくかく)は非常に長く,上縁に17〜20本の可動棘を,下縁に7〜10本の不動棘をもつ。体長は14cmくらいに達する。北海道内浦湾以南,遠州灘,土佐湾までの水深300〜500mの泥底に生息。機船底引網で漁獲される。近縁種に真紅色のホッコクアカエビ(体長12cm。その味からアマエビとも),赤褐色の横縞(じま)のあるトヤマエビ(体長17cm)などがあり,両種とも中部以北の日本海に分布。いずれも成長に伴って雄性先熟の性転換を行う。美味。

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