翻訳|bobsleigh
鋼鉄製のそりを使い,山腹の斜面に作られた氷のコースを滑降してタイムを競う競技。冬季オリンピックでは,男子2人乗りと4人乗り,女子2人乗りがある。そり競技にはボブスレーとリュージュ(トボガン)などがあるが,後者はプラスチック製あるいは木製でハンドルとブレーキがない。その他,足を前にして乗るボブスレー,リュージュとは異なり,頭を前にして腹這いになってソリに乗るスケルトンskeletonがある。オリンピックでは,2002年ソルトレークシティ大会で54年ぶりに復活し,男女の1人乗りが行われる。
雪国で交通機関や木材運搬用に使われていた木ぞりを,1883年イギリス人がサン・モリッツ(スイス)でスポーツ化したのが始まりといわれている。当初木製のそりだったが,90年代に入ると,それにあきたらない人たちが,鋼鉄製でハンドルとブレーキをとりつけたそりを考案した。コースも最初は自然の山道を利用して作られていたが,スピードが増すに従って危険が出てきたので,外へ飛び出さないようにくふうした人工的なコースが作られるようになった。ヨーロッパを中心に発達し,1914年にヨーロッパ選手権が行われた。23年には国際ボブスレー・トボガニング連盟Fédération Internationale de Bobsleigh et de Tobogganing(略称FIBT)が設立され,翌24年の第1回冬季オリンピックには正式種目として登場している。
日本への移入は37年。40年に予定されていた札幌冬季オリンピックのため急きょ札幌に日本ボブスレー協会ができ,37年にドイツから専門家を招いて講習会を開いた。翌38年には国内初の競技会も開かれたが,戦争で同大会は中止されすべてが立ち消えとなった。しかし戦後,札幌オリンピック再招致にあたって復活し,63年にFIBTに加盟,72年の札幌大会からオリンピックに参加した。85年にリュージュと統合し,日本ボブスレー・リュージュ連盟となる。FIBT加盟国48ヵ国(1997年現在)。
2人乗り,4人乗りとも1日2回,2日間に計4レースを行い,そのタイム合計で順位を決める。コースは,全長1500m以上。選手を乗せるそりの大きさは2人乗りが長さ2.7m,幅67cm,4人乗りが3.8m,67cmの制限があり,選手を含めた最大重量は,2人乗りが390kg,4人乗りが630kgまで。鉄や鉛をそりに固定して制限いっぱいまで重さを増やすことが許されている。
そりの前部に乗ってハンドルを握る選手をパイロット,後部でブレーキを操作する選手をブレーカーと呼ぶ。ブレーカーはスタートでそりを押すための走力も必要である。最高時速150km。一般に時速110~120kmのスピードが出るため〈氷上のF1〉ともいわれ,勇壮果敢な精神と瞬間の判断力が必要。危険を考慮して18歳以上との年齢制限があるため,他の競技からの転向者が多い。日本でも1998年の長野オリンピックでは陸上競技の選手が代表の一員になっている。体力,スピード経験がものをいうため,ドイツ,スイス,イタリアなど欧州アルプス周辺国が伝統的に強い。
執筆者:加藤 博夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
前方にハンドル、後方にブレーキを備えた鋼鉄製のそりのこと。また、ボブスレーで氷上コースを滑走しその速さを競い合う競技においては、そりの名称そのものが競技名にもなっている。
ボブスレーbobsleighの名前の由来は、スピードが増すにつれて選手の上体が前後左右に振れる(ボブbob)そり(スレーsleigh)ということから名づけられたとされる。発祥の地はスイスのアルプス地方で、ウィンター・リゾートを訪れる富裕層の遊びから始まり、競技性を帯びたものに発展していった。そして、初期のそりは木製であったが、競技トラックの難易度があがったことによるスピードの増加に伴い、金属製のものに変化していった。滑走中の最高速度は時速140キロメートルを超えるため、「氷上のF1(エフワン)レース」ともよばれているスポーツである(F1は自動車レースの最高峰フォーミュラ1の略)。1923年に創設された国際ボブスレー・トボガニング連盟(FIBT:Fédération Internationale de Bobsleigh et de Tobogganing)がこの競技を統括する国際連盟である。
オリンピック種目としては、1924年の第1回冬季オリンピック・シャモニー・モンブラン大会(フランス)から行われている競技で、当初は男子4人乗り種目だけであった。しかし、1932年の第3回レーク・プラシッド大会(アメリカ)より男子2人乗りが加わり、また、2002年の第19回ソルト・レーク・シティ大会(アメリカ)からは女子2人乗りも加わって、全3種目の競技として今日に至っている。日本は1972年(昭和47)の第11回札幌(さっぽろ)大会より出場している。
当初は自然の地形を利用したコースで競技が行われていたが、スピードの増加に伴い、現在各種の国際大会が行われている会場は、サン・モリッツ(スイス)を除き、すべて人工凍結トラックになっている。また、すべての競技トラックは、その長さ、斜度、カーブの数や形状等が異なっており、一つとして同じトラックはない。
競技用具としては、鋼鉄製のシャーシ(車台)の前部にハンドル、後部にブレーキをつけ、選手の安全を考慮し、後部乗り口を除く周囲がカーボン等のカバーで覆われているそりを使用する。そりの前部と後部はセパレーターにより異なる動きができる構造になっており、カーブ出入口周辺での滑走がスムーズにできる。そして、そりの下部にはランナーとよばれる氷と接するブレード(刃)が4か所についている。
選手は、静止したそりを力強く押し出し、加速させながらボブスレーに飛び乗る。その後、パイロット(操縦者)はボブスレーを操縦し、ブレーカー(制動手)は空気抵抗を減らすために低い姿勢でそり内に体を沈め、ゴールと同時にブレーキを引いてそりを止める役目を担う。4人乗りの場合は、さらに2人が始動時にそりを押すプッシャーとして、パイロットとブレーカーの間に加わる。
100分の1秒単位で速さを競うこの競技の勝敗の鍵(かぎ)を握る要素は三つあり、その一つ目はボブスレー本体とランナーを中心とした素材(マテリアル)の性能である。ボブスレー開発に国家プロジェクトとして取り組んでいる国もあれば、有名自動車メーカーが莫大(ばくだい)な資金提供をして開発している国もある。二つ目は初速(スタートタイム)をいかに速くするかということである。そのためには大型で瞬発力とスプリント力を兼ね備えた選手の発掘・育成が重要である。三つ目の要素はパイロットの操縦能力である。この三つの要素が総合的にもっとも優れているチームが勝者となっている。
[山夲忠宏]
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(折山淑美 スポーツライター / 2007年)
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