マウレタニア(その他表記)Mauretania

改訂新版 世界大百科事典 「マウレタニア」の意味・わかりやすい解説

マウレタニア
Mauretania

古代の北アフリカにおけるマウリ族ムーア人)の居住地域。今日のアルジェリア西部からモロッコ大西洋岸までの区域で,現在の西アフリカの国の名モーリタニアはこの呼称に由来する。前2世紀ころには,マウリ部族民による王国が形成された。ボックスBocchus王やボグドBogud王らは,ローマ共和政末期のユグルタ戦争内乱に関連して重要な役割を演じた。その過程でローマの被保護王国となり,ユバ2世在位,前25-後23)の治世には,ヘレニズム文化の影響が強まり,ローマ法やギリシア美術が摂取された。その後継者たる息子プトレマイオス(在位23-40)の殺害後の内乱に続いてローマ国家が介入し,クラウディウス帝はこの地を二分して,東部のマウレタニア・カエサレンシスMauretania Caesarensisと西部のマウレタニア・ティンギタナMauretania Tingitanaの2属州を設けた。帝政初期には数多くの植民市が創設され,イタリアからの移住者も増大したが,総じていえば,都市化・ローマ化は補助軍構成を中核とした軍事的性格の強いものであった。しかし,このような古典古代文化の浸透過大評価されるべきではない。国土大部分はなお部族社会の域にとどまり,遊牧民の生活が続いた。沿岸地域では穀物・オリーブ栽培が発展したが,輸出品としては黒檀材,貴木材,紫色染料などがあったにすぎない。3世紀後半から反乱が相次ぎ,帝政後期には属州としての地位が低下して,西部地域はヒスパニアの行政管区の下に統轄された。
モーリタニア
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マウレタニア」の意味・わかりやすい解説

マウレタニア
Mauretania

アフリカのアトラス山脈の西半分を含むアンプサガから大西洋までの地域の古代ローマ時代の呼称。現在のモロッコおよびアルジェリアにあたる。先住民はベルベル系の半遊牧民で,マウリ族とマサエシュリ族とに分けられた。前2世紀後半にローマに臣従。1世紀中頃にローマに併合され,チンギ (タンジール) を州都とする西部と,カエサリアを州都とする東部とに分割された。ローマの影響力は沿岸部にとどまり,5世紀には独立したが,7世紀にアラブ人に征服された。

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