分析化学用語。遮へい(蔽),隠ぺいともいう。化学反応において目的の反応を妨害する物質が共存するとき,他の物質を加えるなどしてその妨害を取り除くこと。たとえばCu2⁺とAl3⁺が共存する試料中のCu2⁺のみを分析したいとき,そのままでは合量が分析にかかるが,F⁻を加えるとAl3⁺はF⁻と強く結合するので,Cu2⁺のみを分析することができる。その他の方法として妨害物質の酸化状態を変える方法がある。Cu2⁺とZn2⁺をEDTAで滴定するとき,チオ硫酸ナトリウムを加えるとCu2⁺のみが還元されてCu⁺になってEDTAと反応せず,Zn2⁺だけが滴定できる。F⁻やチオ硫酸ナトリウムのことをマスキング剤という。このようにマスキングは妨害物質をろ(濾)過などで系外に除去するのではなく,その遊離濃度を激減させることに特徴がある。こうした操作は以前から断片的には行われていたが,とくに金属錯体の生成という観点からマスキングの概念を明確にしたのはファイグルF.Feiglである(1936)。
執筆者:中須賀 徳行
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
しゃへいともいう.目的成分の検出,または定量を妨害する共存成分を系外に除去することなく,適当な化学的処理をほどこしてその妨害をなくすこと.処理のために加える試薬をマスキング剤という.マスキング剤としては,妨害成分(主として金属イオン)に対し,選択的に作用する錯形成剤が用いられる.たとえば,アルカリ土類金属イオンのEDTA滴定の際,これを妨害する Co2+,Ni2+,Cu2+ などの重金属イオンは,シアン化カリウムをマスキング剤として添加することによってしゃへいすることができる.マスキング剤としては,そのほか,アンモニア,トリエタノールアミン,EDTA,酒石酸,クエン酸などがよく利用される.錯形成剤でしゃへいするほか,妨害イオンを酸化または還元し,イオン価を変えて無害にする場合もあるが,この場合,加えられる酸化還元剤に対してはマスキング剤とよばないことが多い.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報
…チューリップのように花の斑入りが現れるものもある。温度・光・栄養条件の変化で病徴の消失することをマスキングという。退緑部では柵状組織や葉緑体の発達が悪い。…
※「マスキング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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