滴定(読み)テキテイ(英語表記)titration

デジタル大辞泉 「滴定」の意味・読み・例文・類語

てき‐てい【滴定】

容量分析の際の操作。ふつう、濃度のすでにわかっている標準溶液ビュレットから試料溶液に滴下し、反応に必要な滴下量から試料溶液の濃度を計算で求める。

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精選版 日本国語大辞典 「滴定」の意味・読み・例文・類語

てき‐てい【滴定】

  1. 〘 名詞 〙 化学の容量分析などで物質の定量を行なうための操作をいう。一定体積の試料溶液に、既知濃度の標準溶液をビュレットで滴下して反応させ、反応が終了した時の標準溶液の滴下量を求めて試料溶液の濃度を算出するもの。〔稿本化学語彙(1900)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「滴定」の意味・わかりやすい解説

滴定
てきてい
titration

容量分析を行う際に用いられる方法あるいはその操作をいう。もっとも普通に行われる操作は、被験物質Aを含む溶液(試料)に、Aと定量的に反応する物質Bの溶液(濃度既知のもの、すなわち標準液)をビュレットから滴下し、Aの全量が定量的に反応し終わる(当量点、現実には終点)までに加えられたBの量を測定し、これによりAを定量する。当量点は指示薬変色やその他物理化学的手段で求め、この量から計算によって濃度を求める(このような操作をとらない滴定法もある。たとえば、電量滴定、ガス滴定、重量滴定など)。常温あるいはすこし温めた状態で定量的に、かつ速やかに進む反応であって、反応の終点を正しく知ることのできる反応はすべて利用でき、反応の型によって中和滴定酸塩基滴定)、酸化還元滴定沈殿滴定錯滴定(多くの金属イオンと安定なキレートを生成する滴定試薬を用いるキレート滴定を含む)などに分類される。また滴定剤の名称(たとえばヨウ素滴定過マンガン酸塩滴定)や反応の終了点の検知に用いる方法(たとえば電位差滴定電流滴定高周波滴定温度滴定)などによってもよばれている。

[高田健夫]

『G・D・クリスチャン著、土屋正彦他監訳『分析化学1 基礎』(1989・丸善)』『日本分析化学会編『入門分析化学シリーズ 定量分析』(1994・朝倉書店)』


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改訂新版 世界大百科事典 「滴定」の意味・わかりやすい解説

滴定 (てきてい)
titration

物質の量を知るために,濃度既知の他の溶液を加えていくこと。一定量の試料にビュレットから他の溶液を加え,終点までに要した体積から濃度を決定する容量分析の操作をさすことが多い。たとえば海水中の塩化ナトリウムの量を知る目的で,濃度のわかっている硝酸銀溶液を加える。そのときの反応はAg⁺+Cl⁻─→AgClであり,AgClは沈殿する。Cl⁻がAg⁺と反応し終わった時点で,指示薬のフルオレセインが沈殿に吸着して桃色に変わるので,それまでに加えた硝酸銀の体積からCl⁻の量を知ることができる。海水のCl⁻濃度をC0,体積をV0とすると,Cl⁻の量(モル数)はC0V0である。濃度のわかった硝酸銀溶液(標準溶液)の濃度をC,要した体積をVとすると,当量点においてはCl⁻とAg⁺のモル数は等しいから(当量関係),C0V0CVC0以外はわかっているから,C0を求めることができる。C0C=0.5mol(mmol/cm3),V0=20cm3の場合に,滴定に伴うCl⁻濃度(対数)の変化を図に示す。これからもわかるように,当量点付近(±1%)でCl⁻の濃度は1万倍以上変化する。一般に滴定法が可能となるためには,当量点においてなんらかの量が急変することが条件となる。上では沈殿滴定の例をみてきたが,酸と塩基の反応を利用する中和滴定ではプロトンの濃度(pH),酸化還元滴定では電子を授受する化学種の濃度(電位に関係),キレート滴定では金属イオンまたはそれと錯体をつくる化合物(配位子)の濃度などが大きく変わる。それに伴う測定物理量から分類すると,電位差滴定,光度滴定,伝導度滴定,温度滴定,電流滴定などがある。当量点を実験上精確に求める(終点)ことが重要で,迅速さからも近年しだいに自動化される傾向にある。しかし指示薬の変色などを肉眼で見て終点を決める目視滴定も,簡単ではあるが4けた程度の精度で分析することができる。

 滴定法はJ.L.ゲイ・リュサックによる沈殿滴定(1835)に始まるとされていたが,ジョフロワClaude Joseph Geoffroy(1685-1752)が食用酢を炭酸カリウム標準液で中和滴定した(1729)という記録が残されている。またル・モニエLouis-Guillaume Le Monnier(1717-99)のミネラル水の分析(1747)に続いて,ブネルGabriel F.Venel(1723-75)が水を硫酸で分析するのに,初めて指示薬を用いている(1750)。宇田川榕菴訳《舎密開宗(せいみかいそう)》(1837)にも中和に関する記述はみられるが,測容器などについては述べられておらず,本格的な容量分析が日本で始まるのは明治に入ってからである。
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百科事典マイペディア 「滴定」の意味・わかりやすい解説

滴定【てきてい】

容量分析で行う操作の一つ。通常,試薬溶液ないし試料溶液をビュレットにとり,ビーカー中の一定量の試料ないし試薬溶液に滴下して反応の終点を決定し,その滴下量から試料成分を定量する方法。反応の終点の決定には,溶液の色の変化,あるいは指示薬の変色を利用するもののほかに,電位差滴定電導度滴定高周波滴定などの方法も利用される。また反応の種類により,酸滴定,アルカリ滴定(以上中和反応),銀滴定(沈殿反応),ヨウ素滴定(酸化還元反応),キレート滴定などと呼ぶこともある。

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化学辞典 第2版 「滴定」の解説

滴定
テキテイ
titration

濃度既知の標準溶液を用い,化学量論的反応によって被検溶液中の物質濃度を決定する容量分析法の操作.その終点を判定するため,種々の指示薬や物理化学量の変化が用いられる.酸塩基滴定(中和滴定),酸化還元滴定沈殿滴定キレート滴定,クーロン滴定(電量滴定),(吸)光度滴定,温度滴定などがある.また,滴定溶液の種類によって,過マンガン酸塩滴定,二クロム酸塩滴定,セリウム滴定,チタン滴定,ヨウ素滴定銀滴定,水銀滴定などと区別する.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「滴定」の意味・わかりやすい解説

滴定
てきてい
titration

容量分析で用いられる定量分析操作の1つ。濃度未知の試料溶液の一定量中に含まれる問題の物質の全量と反応するのに必要な既知濃度の試薬溶液 (標準溶液という) の体積を測定し,その量から問題の物質の量を求める方法。通常反応溶液の一方をビュレットから滴下するので滴定という。反応の終点を判定するには,指示薬を利用する場合が多いが,そのほか各種の物理的方法も用いられる。その方法により電位差滴定,電導度滴定電流滴定,光度滴定などの名称が与えられる。また利用される反応の型により,中和滴定,酸化還元滴定,沈殿滴定,キレート滴定に分類される。迅速,精度の高い定量分析法として古くから広く賞用されている。

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栄養・生化学辞典 「滴定」の解説

滴定

 溶液内の試料物質の量を定量する目的で,その物質と反応する物質を濃度を特定して溶解しておき,反応を利用して消費された濃度のわかった物質の方の体積から試料物質の量を定量する方法.

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