マトイシモチ(読み)まといしもち(英語表記)ocellate cardinalfish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マトイシモチ」の意味・わかりやすい解説

マトイシモチ
まといしもち / 的石持
ocellate cardinalfish
[学] Jaydia carinatus

硬骨魚綱スズキ目テンジクダイ科コミナトテンジクダイ亜科マンジュウイシモチ族に属する海水魚。太平洋側では千葉県から九州南岸、日本海側では若狭(わかさ)湾から五島(ごとう)列島、および東シナ海、朝鮮半島南岸、台湾、朝鮮半島南岸、中国、フィリピン諸島、オーストラリア北西岸など西太平洋に広く分布する。体は中庸の長楕円(ちょうだえん)形で側扁(そくへん)する。体高は体長の約35%。吻(ふん)は短く、吻長は眼径より短い。口は大きく、上顎(じょうがく)長は頭長の約半分。上顎の後端は目の中央下に達する。上主上顎骨はない。上下両顎の歯は小さい歯の歯帯を形成し、犬歯はない。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨に絨毛(じゅうもう)状の歯帯がある。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の隆起線には鋸歯(きょし)がないが、腹辺には鋸歯がある。背びれは胸びれ基底上方から始まり、2基でよく離れ、第1背びれは7棘(きょく)、第2背びれは1棘9軟条で、第1背びれの第4棘は第3棘より長い。臀(しり)びれは第2背びれ起部よりすこし後ろ下方から始まり、2棘8軟条。胸びれは多くて16~17軟条。頭部と体の鱗(うろこ)は櫛鱗(しつりん)で、大きくて薄く、はがれやすい。側線有孔鱗数は24~25枚。鰓耙(さいは)は上枝に1本、下枝に10~11本。尾びれの後縁は丸い。体色は灰色がかった淡黄褐色で、腹側部では銀白色。目の下に暗褐色の斜帯がある。第1背びれの前半部縁辺は暗色で、第2背びれの最後の4軟条の基部近くに眼径大の眼状斑(はん)がある。臀びれの軟条部の縁辺と尾びれの縁辺は黒い。水深50~100メートルの砂泥底に生息し、おもにエビ類、魚類、イカ類などを食べる。産卵期には雌雄が対(つい)になり、雄が卵塊を口内保育する。底引網で混獲され、市場では雑魚(ざこ)として取り扱われる。最大全長は15センチメートルほどになる。

 2014年(平成26)に、魚類学者の馬渕浩司(まぶちこうじ)(1971― )らはDNAの分析結果に加えて、前鰓蓋骨の腹縁が骨質であることなどの形態的特徴により、本種を長く慣習的に使用されてきたコミナトテンジクダイ属(旧、テンジクダイ属)Apogonからツマグロイシモチ属へ移動した。本属は背びれ第4棘が最長であることで、第3棘が最長のスジイシモチ属Ostorhinchusと区別できる。

[尼岡邦夫 2023年4月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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