知恵蔵 「マルチコア」の解説
マルチコア
1990年代前半まで、CPUは内部の処理構造やクロック周波数の上昇で順調に処理能力を伸ばしてこれた。だが、半導体製造技術上の課題が顕在化したことで、「1つのCPUでの高速化」が難しくなってきた。そこで、それまで「1つのCPU」として使われてきた部分を「コア」として扱い、1つのLSI内に複数の「コア」を搭載することで、CPU性能の向上を持続するという発想が生まれた。これは、それ以前より、大型コンピュータの分野では、複数のCPUを1台のコンピュータ内に搭載する「マルチCPU」構成を、1つのLSI内で再現したもの、といっていい。
1999年、IBMがサーバー向けCPU「POWER4」で採用したことから脚光を浴び、2004年にはIBM・ソニー・東芝が共同で、プレイステーション3/次世代家電/サーバー向けに「Cell Broadband Engine」を開発したことで注目を浴びた。
パソコン用としては、2005年にインテルとAMDが商品化、以後低価格製品以外では一般的なものとなっている。
一般に、コア数が多いほど性能は高いが、複数のコアに対し、完全に分割して処理をするのが難しいため、処理速度の向上度合いはコアの数に比例せず、ゆるやかなカーブを描く。
なお、PC用CPUのように、同じコアを複数搭載するものを「ホモジニアス・マルチコア」、Cellや家電向けLSIのように、特徴が異なる複数のコアを搭載するものを「ヘテロジニアスマルチコア」と呼ぶ。後者の方がコストの割に処理速度を上げやすいが、ソフトの開発に特殊な手法が必要とされるという欠点がある。
(西田宗千佳 フリージャーナリスト / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報