ミズウオ(読み)みずうお(英語表記)lancetfish

改訂新版 世界大百科事典 「ミズウオ」の意味・わかりやすい解説

ミズウオ (水魚)
Alepisaurus ferox

ヒメ目ミズウオ科の海産魚。巨大な口ときば状の歯をもち,魚類,イカ・タコ類,エビ類などを貪食(どんしよく)する。英名のlancetfish,handsaw fish,wolf fishはこのような形態や習性に由来する。体は細長くやせ細る。和名は肉質が水分を多く含むことによる。背びれ脂びれのある体の後半の一部を除き背縁のほぼ全体を覆い,うちわ状で,その高さは体高の2~3倍に達する。しりびれは背びれの後端と脂びれの下付近に,腹びれは体の中心より前方にある。全長2mに達し,太平洋インド洋大西洋熱帯から寒帯域にかけて広く分布する。マグロはえなわ漁業の混獲物としてふつうに採集される。ミズウオの胃内容物は,消化速度が遅いため未消化で新鮮なものが多いこと,餌の種組成が多様なことで有名であり,ときには人間が網や釣りでは採集できない珍しい種が完全な状態で発見される。ミズウオ科Alepisauridaeは全世界で本種と大西洋・南太平洋産のA.brevirostrisの2種を含む。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミズウオ」の意味・わかりやすい解説

ミズウオ
みずうお / 水魚
lancetfish
[学] Alepisarus ferox

硬骨魚綱ハダカイワシ目ミズウオ科に属する海水魚。太平洋、インド洋、大西洋などから報告されている。体の背方は暗青色、腹方は銀白色である。大きく幅広い背びれを有し、その後方に小さな脂びれがある。口が大きく、両顎(りょうがく)の歯、口蓋骨(こうがいこつ)の歯は大きく鋭い。深海性であるが表層にも現れる。胃の内容物に各種の深海性魚類が発見される場合が多いが、プラスチックや人工物も発見されるので、身近なものはなんでも飲み込む習性があると考えられる。背びれ32~41軟条、臀(しり)びれ13~18軟条。駿河(するが)湾の湾奥部分、とくに三保海岸に打ち上げられたものが多数採集されている。肉は水っぽく、食用にされない。世界で2種類が報告されている。

[上野輝彌]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミズウオ」の意味・わかりやすい解説

ミズウオ
Alepisaurus ferox; long snouted lancetfish

ヒメ目ミズウオ科の海水魚。全長 2m内外。体は著しく延長し,側扁する。吻は長く,先端がとがる。口は大きく,両顎に鋭い歯がある。背鰭は大きく帆状で,その基底は体の背面の大部分を占める。体の背部は暗青色で,十数条の暗色斜走帯がある。腹側は白色。背鰭は基部が暗青色,縁辺部は黒色で,多数の黒点が散在する。深海性(→深海魚)。マグロ延縄にかかるほか,かつて行なわれていたサケ流し網にかかっていた。北海道南岸以南,世界中の海域に分布する。

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