ミズニラ(その他表記)Isoetes japonica A.Br.

改訂新版 世界大百科事典 「ミズニラ」の意味・わかりやすい解説

ミズニラ
Isoetes japonica A.Br.

池沼,小川,泥地に生じる多年生の夏緑性鮮緑色の柔らかい水草で,シダ植物ヒカゲノカズラ亜門ミズニラ科に属する。ニラに似た姿をした水草であるところから和名がついた。茎は三分した塊茎で,二次生長をする。根が塊茎の下部から多数出る。葉は多数が叢生(そうせい)し,長さ20~30cm,細長い四角ばった円筒形で,先はしだいに細くなってとがる。基部は白色卵形に広がり,三角形の小舌が葉の表にある。胞子囊は葉基部の表につく。胞子は大胞子と小胞子の区別がある。本州,四国,九州に広く分布し,朝鮮,中国からも知られている。ミズニラ科は1957年までミズニラ属Isoetesだけからなると考えられていたが,茎が塊茎にならずに長く伸びて直立し,二叉(にさ)分枝する点でこの属と区別されるスティリテス属Stylitesが南アメリカのペルーのアンデス山地にあることがわかった。しかし両属の中間的な種がコロンビアから知られており,スティリテス属を独立属とみることに疑問をもつ人もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミズニラ」の意味・わかりやすい解説

ミズニラ
みずにら / 水韮
[学] Isoetes japonica A. Br.

ミズニラ科の夏緑性水生シダ。全体はニラに似て柔らかい。茎は塊茎状で、通常、径2~3センチメートルであるが、二次肥大成長を行って5センチメートルになることもある。葉は白く広がる卵形の基部から多数束生し、長さ10~30センチメートルで細長く、先がとがる。向軸面(葉の上側)に小舌(しょうぜつ)とよばれる三角形の小突起があり、その基部のくぼみに2型の胞子嚢(のう)を生ずる。内側の葉に大胞子嚢、外側の葉に小胞子嚢がつき、夏から秋にかけてそれぞれ大胞子と小胞子を生ずる。本州以西の浅い沼や田、溝でみられる。

 小舌のあることでイワヒバ科クラマゴケの仲間であると思えるが、形態の比較から、古生代石炭紀の鱗木(りんぼく)などの巨大な小葉類の末裔(まつえい)とされる。

[西田治文]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミズニラ」の意味・わかりやすい解説

ミズニラ(水韮)
ミズニラ
Isoetes japonica

ミズニラ科の夏緑性シダ植物。水生で軟らかい。水中に生え,多くは植物体全体が水中に没してときに葉の一部が水の外へ出る。根茎は短く,底部が3分する。葉は長さ 20~40cm,鮮緑色で4稜のある円柱状,先端が次第にとがり多数叢生する。葉の基部は白色で卵形の鞘状に広がり,縁は薄膜質になる。夏から秋にかけて,葉の基部の内側のくぼみに胞子嚢をつけ,そのすぐ上部に1枚の長三角形の小舌がある。ヒメミズニラ I. asiaticaは根茎の底部が2分し,より小型で,胞子嚢には蓋膜がある。その他九州を中心にシナミズニラもある。ミズニラの仲間は日本産のこれら3種を含め,全世界に約 65種ほど知られているが,特にやや寒い地方に分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のミズニラの言及

【藻】より

…水中に生えている植物。もともと水生生活をする藻類だけでなく,陸上植物から水生に変わったアマモやキンギョモなどの顕花植物,サンショウモやミズニラなどのシダ植物,マリゴケなどのコケ植物も漠然とまとめて呼ぶ。【堀田 満】。…

※「ミズニラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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