翻訳|monorail
高架に設置された1本のレールを通路として使用しながら走行する旅客輸送鉄道。たいてい2両から6両を1編成とする。ほかの鉄道システムとの相互乗入れは技術的にできない。用地の占有面積が少ないため土地の収用費用は低い。短期間で建設ができる(1年間に約8キロメートル)一方で、路面電車よりも約3倍の導入費用がかかる。多くの場合、10キロメートル程度の短距離を、時速20キロメートルから40キロメートルで運行する。道路交通渋滞の回避手段として都市交通に導入されているだけでなく、車窓からの眺望に優れているため観光交通にも使用されている。車両がレールにまたがって走る跨座式(こざしき)と、車両がレールにつり下がる懸垂式がある。元来鉄道はその字のように発生の過程からレールも車輪も鉄製であったが、モノレールのレールは初期には木製、続いて鋼鉄製となり、現在は鉄筋コンクリート製のモノレール桁(けた)が主流である。車輪は鋼鉄製よりゴムタイヤ式のほうが増えている。ゴムタイヤ式は、急加速、急曲線、急勾配(こうばい)の路線を静音で移動することに対応できる。
[吉村光夫・藤井秀登 2020年4月17日]
1824年に、世界最初のモノレールがイギリスの土木技師ヘンリー・パーマーHenry Robinson Palmer(1795―1844)によってロンドンで誕生した。G・スティーブンソンが蒸気機関車ロコモーション号の実用化に成功する1年前であった。すでに錬鉄製のレールはつくられていたが、1821年11月にイギリスで特許を取得していたパーマー式モノレールは木製のレールを使っていた。このモノレールは、レールの左右につるされた籠(かご)を馬に牽引(けんいん)させる方式であり、建築現場の資材運搬用として考案された。輸送力はロコモーション号とは比べものにならないぐらい低かった。
1888年になって、本格的なモノレールがフランスの土木技師シャルル・ラルティグCharles Lartigue(1834―1907)によってアイルランドのリストウェル―バリブニオン間15キロメートルに敷設された。ラルティグ式モノレールは、1本の鋼鉄製レールを地上1メートルぐらいの高さに設置するだけでなく、その中央レールの左右に1本ずつの鋼鉄製サイドレールを地表近くに設置しており、中央レールとサイドレールを支える支柱は1メートル間隔で敷設された。蒸気機関車と貨車や客車は中央レールをまたぐ格好で乗り、サイドレールは案内輪用であった。跨座式で、バランスをとるために蒸気機関車のボイラーはレールの左右に1個ずつ配置され、鋼鉄製の車輪は横からは見えなかった。アイルランド内戦(1922年6月~1923年5月)によって破壊され、1924年に廃業となった。
1901年、ドイツのオイゲン・ランゲンEugen Langen(1833―1895)が懸垂式モノレールを都市交通機関としてルール地方のウッパータールで開業した。ウッパータールでは渓谷沿いに建物が並んでいるため、懸垂式モノレール路線の大部分はウッパー川の上に鉄骨を組み設置された。1本の鋼鉄製のレールを両側にフランジ(輪縁)のついた鋼鉄製の車輪が挟み込む、両フランジとよばれる技術を採用している。街路では地上から約8メートル、ウッパー川では約12メートルの高さに支柱が設置してある。営業を続けている懸垂式モノレールでは、世界でもっとも古い。2018年(平成30)9月に懸垂式モノレールとして日本最古の湘南(しょうなん)モノレールと、姉妹懸垂式モノレール協定を締結している。
第二次世界大戦後の1952年、スウェーデンの実業家アクセル・レナルド・ウェンナー・グレンAxel Leonard Wenner-Gren(1881―1961)が新しいモノレールの実験をドイツのケルン近郊で開始した。原理はラルティグ式と同じ跨座式であるが、レールは太い鉄筋コンクリート、車輪は大型のゴムタイヤとし、走行用車輪のほかにレールを挟む補助車輪を取り付けて安定を保つ方式を採用、考案者の頭文字を集めてアルウェーグ(ALWEG)式と命名した。アルウェーグ式モノレールはモノレールの実用化を大きく進め、1957年にはケルンの博覧会場に1.8キロメートルが、1959年にはアメリカのディズニーランドの中に1.3キロメートルが建設された。
1960年にはフランスのパリ近郊でサフェージュ式モノレールが生まれた。フランス企業管理研究株式会社(La Société Anonyme Française d'Études, de Gestion et d'Entreprises)とその関係会社が、フランス国有鉄道とパリ交通公団との協力で開発した。サフェージュ(SAFEGE)とは、開発主体となった会社の頭文字を並べたものである。ランゲン式と同様の懸垂式モノレールであるが、レールが鋼板箱型の筒状で、その中を車両の屋根上の支柱につけられたゴムタイヤ車輪が走行する。
このほか、アメリカで1962年3月にシアトルの万国博覧会のための交通機関や1971年10月にフロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート内の路線としてモノレールが開業した。2000年代に入ってからは、中国の重慶(じゅうけい)で2004年11月に重慶軌道交通2号線、2011年9月に同3号線のモノレールが開業した。また、2007年1月にシンガポールでセントーサ・エクスプレスが、2009年4月にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパーム・ジュメイラ・モノレールが、2014年8月にブラジルのサン・パウロで地下鉄15号線のモノレールが、2015年4月に韓国の大邱(たいきゅう/テグ)で大邱都市鉄道3号線のモノレールが開業している(いずれも跨座式)。
[吉村光夫・藤井秀登 2020年4月17日]
日本にモノレールが紹介されたのは、1928年(昭和3)大阪天王寺(てんのうじ)公園で開催された交通電気博覧会で運行した懸垂式モノレールである。この空中電車は安全性への信頼を得られず、博覧会期間だけの運行に終わった。
1957年(昭和32)12月17日、路面電車にかわる新しい都市交通機関の研究と園内遊覧用を兼ねて、東京都交通局が上野動物園に330メートルの懸垂式モノレール(上野懸垂線)を、地方鉄道法(1987年に日本国有鉄道法と一本化され、現在は鉄道事業法。以下同様)の適用を受ける形で日本で最初に開業した。日本車両会社が製造し、ドイツのウッパータールのランゲン式と似ているが、ゴムタイヤ車輪を使用する点が異なり、日本車両式モノレールといわれていた。車両の経年劣化のため、2019年(令和1)11月から運行休止になっている。
1961年7月1日、奈良ドリームランド内に8の字型のループ線840メートルとして、地方鉄道法に準拠した東芝式(後述)の跨座式モノレールが開業した。鉄筋コンクリート製のモノレール桁が日本で初めて使用された。その後、モノレール桁は、東京モノレール、北九州モノレール、大阪モノレール、多摩都市モノレール、沖縄都市モノレール(ゆいレール)などで使われている。
1962年3月21日、名古屋鉄道(名鉄)犬山(いぬやま)遊園駅から動物園駅までの1.2キロメートルに地方鉄道法の適用を受けて、アルウェーグ式モノレールが犬山モノレール(モンキーパーク・モノレール)として開業した。途中にある97‰(パーミル、千分率)の急勾配を克服するのに、ゴムタイヤのアルウェーグ式が適していたためである。アルウェーグ式は1964年1月1日から、神奈川県川崎市のよみうりランド内を1周する、よみうりランドモノレール3キロメートルにも開設された。同じ年の2月8日、サフェージュ式が名古屋市東山公園の動物園と植物園を結ぶ470メートルに、1両の車両で東山公園モノレールとして開通した。サフェージュ式モノレールの実用化は、日本で最初にこの路線で行われた。よみうりランドモノレールと東山公園モノレールも地方鉄道法の適用を受けていた。
1964年9月17日、東京モノレールが地方鉄道法の適用を受けて、浜松町―羽田(現、天空橋(てんくうばし))駅間13.1キロメートルを15分で結ぶ本格的都市交通機関として営業運転を開始した(2004年に延伸し、現在は浜松町―羽田空港第2ターミナル駅間17.8キロメートル)。ドイツで生まれて日本で実用化されたアルウェーグ式モノレールが、東京オリンピック出場のため全世界から集まった選手たちを輸送したのである。
1966年4月23日、小田急電鉄向ヶ丘(むこうがおか)遊園駅と向ヶ丘遊園正門駅間1.1キロメートルに地方鉄道法の適用を受けてロッキード式モノレール(後述)が向ヶ丘遊園モノレールとして完成。跨座式であるが、アルウェーグ式と違って鋼鉄製のレールと車輪を用いている。同じ年の5月2日、神奈川県の大船駅とドリームランド駅間5.3キロメートルに東芝式モノレールが横浜ドリームランドモノレールとして開業。また、同年5月17日には兵庫県の姫路駅と手柄山(てがらやま)駅間1.8キロメートルにロッキード式モノレールが姫路モノレールとして開通した(姫路市営)。横浜ドリームランドモノレールと姫路モノレールも地方鉄道法の適用を受けていた。
1970年3月7日、地方鉄道法の適用を受けて大船駅から西鎌倉駅までサフェージュ式の湘南モノレールが営業を始め、翌年終点の湘南江の島駅まで6.6キロメートルの全線が完成した。この1970年には3月15日から大阪千里(せんり)丘陵で万国博覧会が開催され、会場内の観客輸送用にアルウェーグ式に改良を加えた日本式の跨座式モノレールが敷設されている。以降、国内では1985年まで新規開業はないが、1990年代には多くのモノレールが開業した。1985年以降開業のモノレールについては、「日本の現状―都市モノレールの台頭」に記す。
[吉村光夫・藤井秀登 2020年4月17日]
懸垂式にはランゲン式、日本車両式、サフェージュ式、跨座式にはアルウェーグ式、ロッキード式、東芝式がある。動力はいずれも電気式である。
[吉村光夫・藤井秀登 2020年4月17日]
(1)ランゲン式 ドイツ、ルール工業地帯のウッパータールに走っている。鉄骨で空中に支えられた鋼鉄製のレールに鋼鉄製の車輪が乗り、車輪の車軸は凹型に曲がって車両を懸垂している。
(2)日本車両式 東京上野動物園で採用(2019年11月から運行休止)。レールは鋼板製箱型でゴムタイヤ車輪がレールに乗り、タイヤが外れないように補助車輪が左右からレールを挟んでいる。車両は片側補助車輪の車軸に懸垂される。
(3)サフェージュ式 レールは鋼板製箱型の筒状で、車両を懸垂するために箱の下面中央部は開いている。この開口部両側を、車両の屋根上の支柱につけられたゴムタイヤ車輪が走行する。左右動を防ぐ補助車輪はレールの内側から側面を押している。東山公園モノレール(1974年廃線)、湘南モノレール、千葉都市モノレールに使用。
[吉村光夫・藤井秀登 2020年4月17日]
(1)アルウェーグ式 レールは太いI字型の鉄筋コンクリートで、走行用ゴムタイヤがレールの上に乗り、補助車輪が左右からレールを挟んで安定を保つ。アメリカのディズニーランド、犬山モノレール(2008年廃線)、よみうりランドモノレール(1978年廃線)、東京モノレールなどで採用。なお、日本では、1960年代後半、日本跨座式とよばれる改良型の日立アルウェーグ式が開発され、1962年以降、跨座式モノレールに採用されるようになった。
(2)ロッキード式 アメリカの航空機メーカーのロッキード社(現、ロッキード・マーチン社)が開発した方式。コンクリート製の桁の上に鋼鉄製のレールを乗せ、その上を鋼鉄製の車輪が走る。鋼鉄の補助車輪がコンクリート桁を左右から挟んでいるが、鋼鉄車輪のあたる部分には鋼鉄製レールが取り付けてある。姫路モノレール(1979年廃線)、向ヶ丘遊園モノレール(2001年廃線)で採用された。
(3)東芝式 鉄筋コンクリート製の桁を使用するアルウェーグ式をもとにして東京芝浦電気(現、東芝)が開発した。台車が二つの車体の間に設置された連接台車構造、自動ステアリングに特徴をもつ。奈良ドリームランドモノレール(2003年廃線)、横浜ドリームランドモノレール(1967年廃線)で採用されていた。
[吉村光夫・藤井秀登 2020年4月17日]
湘南モノレール、東京モノレールは営業を継続しているが、上野動物園のモノレールは運行休止、奈良ドリームランドモノレール、よみうりランドモノレール、向ヶ丘遊園モノレール、横浜ドリームランドモノレール、東山公園モノレール、犬山モノレール、姫路モノレールの7線は廃業した。
従来のモノレールは、地方鉄道法に依拠する鉄道施設として建設、運行されていた。しかし、1965年ころから都市部で顕在化してきた道路交通渋滞を契機に、モノレールに対する考え方が変化してきた。道路交通渋滞への対策として、道路空間を活用したモノレール建設の機運が高まり、「都市モノレールの整備の促進に関する法律」(昭和47年法律第129号)が1972年11月に制定されるに至ったのである。この法律に基づくモノレールは都市モノレールとよばれ、地方公共団体または第三セクターを建設・経営の事業主体とし、軌道法を適用して建設することになった。都市モノレールは、原則として道路を利用して建設、運営されるため、あらかじめ都市計画の決定を受ける必要がある。したがって、都市モノレールは都市問題の解決に寄与するだけでなく、街づくりに際しても役だつといえる。これに関連して1974年度からは、「都市モノレール建設のための道路整備事業に対する補助制度」が創設され、都市モノレール建設計画の調査、事業に対する国の補助体制が制度化された(1974年度からは道路整備特別会計によって、2010年度からは社会資本整備総合交付金によって国庫補助が交付されている)。
1970年の湘南モノレール開業以降、新規開業がなかったモノレールも1985年になって北九州高速鉄道が前記の都市モノレールに対する軌道法と補助制度の適用を受けて北九州市の小倉(こくら)―企救丘(きくがおか)駅間8.8キロメートルの北九州モノレールを跨座式で開業した。以下、同様に1988年には千葉都市モノレールが軌道法の適用を受けて千城台(ちしろだい)―スポーツセンター駅間8キロメートルを懸垂式で開業、その後千葉駅まで4キロメートル延長、1999年(平成11)には千葉みなと―県庁前駅間3.2キロメートルが開通し、全長15.2キロメートルとなった。三度の路線延長を経て懸垂型モノレールとして世界最長の営業距離となり、2001年にギネス認定を受けた。1990年には大阪高速鉄道が軌道法の適用を受けて千里中央―南茨木(みなみいばらき)駅間6.6キロメートルの大阪モノレールを跨座式により開業し、以後1994年柴原(しばはら)(現、柴原阪大前)―千里中央駅間3.6キロメートル、1997年大阪空港―柴原駅間3.1キロメートル、南茨木―門真(かどま)市駅間7.9キロメートルを開通した。大阪空港と門真市駅を結ぶ本線21.2キロメートルの開通により、跨座式モノレール営業距離世界最長の認定を受け、1998年にギネスブックに登録された(その後、2011年に中国の重慶軌道交通3号線のモノレールが開業したことによって、ギネス記録の座を失っている)。大阪モノレールは本線のほか万博記念公園―彩都(さいと)西駅間6.8キロメートルの支線である国際文化公園都市モノレール線(彩都線)が1998年~2007年に開通している。多摩都市モノレールは軌道法の適用を受けて1998年立川北―上北台駅間10.6キロメートルが跨座式で開業し、2年後の2000年には多摩センター―上北台駅の全線16キロメートルが開通した。2001年7月に千葉県浦安市の東京ディズニーリゾートに鉄道事業法の適用を受けて開業した環状路線5キロメートルのディズニーリゾートラインも跨座式である。また2003年8月に沖縄都市モノレールが軌道法の適用を受けて那覇(なは)空港―首里(しゅり)駅間12.9キロメートルを跨座式で開業、2019年には首里―てだこ浦西駅間4.1キロメートルが延伸され、全長17キロメートルとなった。
このほかに、特殊な方式のものとして、軌道法の適用を受けてみどり口―みどり中央駅間1.3キロメートルを1998年に開業した広島市のスカイレールがある。懸垂式の小型車両(定員25人)で、駅間は一定の速度で循環するワイヤーロープを握索(あくさく)装置でつかむことにより移動し、駅部ではロープを放してリニアモーター駆動となる。
[吉村光夫・藤井秀登 2020年4月17日]
『生方良雄著『特殊鉄道とロープウェイ』(1995・成山堂)』▽『都市交通研究会著『新しい都市交通システム――21世紀のよりよい交通環境をめざして』(1997・山海堂)』▽『佐藤信之著『モノレールと新交通システム』(2004・グランプリ出版)』
ふつうの鉄道が2本の鋼製レール(軌条)を利用して車両を走らせるのに対し,1本の走行軌条(走行桁)を用いて車両を走行させる鉄道をいう。単軌鉄道ともいい,跨座(こざ)式,懸垂式の別がある。
モノレールの発明は19世紀初めにさかのぼり,種々の考案がなされたが,実用化の第一歩は,フランス人ラルティーグCharles Lartigueによる跨座式に始まった。1888年アイルランドで蒸気機関車を使用する跨座式の営業線が開業し,1924年まで旅客,貨物の輸送に用いられた。またドイツのランゲンEugen Langen(1833-95)の考案による懸垂式の営業線は,1901年ドイツ・ルール工業地帯のブッパータールで開業し,電車運転の方式を用いながら今日なお有効に機能し続けている。ブッパータールでの長期にわたる実用は,市街地化に伴う用地の取得困難に対し,河川上空に高架軌道を架設するアイデアにより支えられてきた。
第2次世界大戦後,急激なモータリゼーションによってもたらされた都市内交通の混乱に伴って,地下鉄道,高架式普通鉄道に比べ建設費が割安なモノレールは,広く注目を浴びるに至った。高架構造に軌道を建設すると,道路,河川などの上空部を効果的に利用できるという長所がある。コンクリート製軌条を敷設し,走行車輪にゴムタイヤを使用すると,鋼製レールに比して,急こう配に対処しやすく,加減速が容易な点も利点とされている。反面,運転経費の割高なことが欠点となる。
1950年代以降,アメリカ合衆国,ヨーロッパで新式モノレールがいくつか開発されたが,実用化ではいち早く技術導入にふみきった日本が,画期的な成功例を保持している。オリンピック(1964)開幕直前,東京の都心部と東京国際空港を結んで開業した跨座式モノレールは,空港連絡鉄道の有効性を実証しつつ,今日に至っている。85年には,市街地内通勤輸送を使命とする都市モノレール(跨座式)が,北九州市の小倉で開業した。懸垂式の代表例には,神奈川県の大船と江の島を結ぶ湘南モノレール(1971全通)がある。なお,モノレールかどうかは議論が分かれるが,札幌市営地下鉄(1971開業)は,レールは1本だが左右1対のゴムタイヤがコンクリート路面上を転ずる,案内軌条式をとっている。
執筆者:中川 浩一
モノレールの形式は,基本的には,車体が走行桁にまたがった形で走行する跨座式モノレールと,車体が走行桁からぶら下がった形で走行する懸垂式モノレールの二つに大別される。細部の差によってそれぞれにもいくつかの型があるが,現在,日本で実用的な交通機関として用いられているのは,跨座式ではアルベーグ型およびこれを改良した日本跨座式と呼ばれるもの,懸垂式ではサフェージュ型と呼ばれるものである。
アルベーグ型および日本跨座式のモノレールは,鉄筋またはプレストレストコンクリートあるいは鋼鉄製の,断面がほぼ矩形の桁を走行桁とし,車両側のゴム製の支持車輪,案内(誘導)車輪,安定車輪がこの走行桁を囲んで走行するものである。すなわち,車両の支持と推進を受けもつ支持車輪(他の2種の車輪よりやや大きい)は走行桁の頂面を転送,また軌道の曲直に応じて車両の走行方向を誘導する案内車輪および車体の転倒を防ぐための安定車輪は,それぞれ垂直軸のまわりに回転し,走行桁の上部および下部を両側からはさむようにして転送する(図1)。
サフェージュ型の懸垂式モノレールでは,走行桁は下部が開口したセミボックス断面の鋼構造が用いられ,その内部を八つのゴム製車輪で構成されたボギー台車が走行するようになっている。車両の支持と推進を受けもつ4輪(駆動車輪)は比較的大きく,走行桁内の水平な走行版上を転送し,他の比較的小さい4輪(案内車輪)は走行桁内の側壁に設置されている誘導版に接触しながら垂直軸のまわりを回転して車両を誘導する(図2)。車体は台車の下に装着される。
なお遊園地などでは,これらからかなり変形した形のモノレールも多い。
前述のようにモノレールは主として高架構造をとり,また占用面積も比較的少なくてすむため,河川上空をはじめ道路上にも設置可能で,限られた都市空間を有効に利用できるという利点をもつ。また,ゴムタイヤを使用するので,騒音も少なく,急こう配の走行もでき,台車の構造から急曲線でも走行可能であり,路線の選定の自由度が大きい。もちろん,消防活動の問題などから道路の拡幅を一部伴う場合もあるが,建設費は地下鉄に比べれば安価である。輸送力ではバスよりははるかに大きいが,日照,都市美観などの問題から高架駅の乗降場の長さが制限され,列車編成長にも限度が生ずるため地下鉄や高架鉄道には劣る。
このような点から,新たな用地の取得が困難な日本の都市において,地下鉄を建設するほどは利用者が多くなく,一方,バスでは輸送力が不足する場合の交通機関として適性があると考えられているが,建設費が高価であるだけに開業後の収支均衡をとりにくい場合が多く,普及にも限度が生じているのが現状である。
執筆者:八十島 義之助
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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[路線]
1996年3月末現在で開業中の鉄道(JRを除く)は169事業者6885.9km,軌道は30事業者446.8km,合計181事業者7332.7kmある(うち18事業者は地方鉄道と軌道を併有)。この中には,特殊な構造を持つ鉄道として,鋼索鉄道(ケーブルカー)22事業者24.0km,懸垂式鉄道および跨座式(こざしき)鉄道(モノレール)6事業者31.4km,案内軌条式鉄道(ゴムタイヤ式のいわゆる新交通システムなど)8事業者79.1km,無軌条電車(トロリーバス)1事業者6.1kmが含まれている。このほか,普通索道(ロープウェー)が188線302.6km,甲種特殊索道(夏山リフト)が172線73.3km,乙種特殊索道(スキーリフト)が2770線1720.2km,丙種特殊索道(スキートー)が43線18.6kmある。…
※「モノレール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
働き手が自分の働きたい時間に合わせて短時間・単発の仕事に就くこと。「スポットワーク」とも呼ばれる。単発の仕事を請け負う働き方「ギグワーク」のうち、雇用契約を結んで働く形態を指す場合が多い。働き手と企...
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