改訂新版 世界大百科事典 の解説
プレストレストコンクリート
prestressed concrete
PCと略称することも多い。荷重によって生ずる引張応力の一部あるいは全部を打ち消すように,あらかじめ圧縮応力を加えてあるコンクリート。このあらかじめ加える圧縮応力をプレストレスという。コンクリートは圧縮強度に比べて引張強度がきわめて低いので,鋼棒あるいは鋼線(総称してPC鋼材という)を緊張することによりコンクリートに圧縮力を加え,コンクリートを圧縮力にも引張力にも強い構造材料としたものがプレストレストコンクリートである。ひびわれ発生がないか,またはあっても少ないため,コンクリートの断面が有効に使え,部材断面の寸法を小さくすることができ,また復元性もよいので長大な橋桁,杭,まくら木,原子力発電所の圧力容器,水道タンク,海洋構造物などに用いられている。
プレストレストコンクリートは,プレストレスの大きさによってⅠ種,Ⅱ種,Ⅲ種に分類され,プレストレスを与える時期によってプレテンション方式,ポストテンション方式に分類される。プレストレスと荷重によって生ずる応力との合成応力が,引張応力とならないようにプレストレスを与えるものをⅠ種,短期の荷重下では引張応力が発生してもよいがひびわれは生じないようにプレストレスを与えるものをⅡ種,短期の荷重下では制限値以下のひびわれの発生が生ずる程度のプレストレスを与えるものをⅢ種と定義する。また,コンクリートを打ち込む前にPC鋼材に引張力を与えておき,硬化後にPC鋼材の引張力を緩めてコンクリートにプレストレスを与える方法をプレテンション方式,硬化後にPC鋼材に引張力を与え,その端部をコンクリートに定着させることによりコンクリートにプレストレスを与える方法をポストテンション方式という。
執筆者:長滝 重義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報