鉄道事業(読み)てつどうじぎょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄道事業」の意味・わかりやすい解説

鉄道事業
てつどうじぎょう

狭義には鉄道事業法のなかで、原則として2本のレール上を車輪で走行する交通機関による旅客または貨物輸送を行う事業。広義では、軌道法上の交通機関(路面電車)やモノレール、ケーブルカーなどを含めることもある。なお、鉄道事業法では索道事業ロープウェースキーリフトなど)が含まれるが、これらが鉄道事業とされることは一般的には稀(まれ)である。

 鉄道事業は、鉄道線路の所有の状況に応じて第1種から第3種まで3種類に分類される。第1種鉄道事業は、自らが敷設する鉄道線路を利用することで運送を行う事業、第2種鉄道事業は、自らが敷設する鉄道線路以外の線路を利用して鉄道を行う事業、第3種鉄道事業は、第1種鉄道事業を経営する者に譲渡する目的をもって敷設する事業あるいは鉄道線路を敷設して第2種鉄道事業を経営する者に専ら使用させる事業のことをいう。

 鉄道事業の規制緩和に伴って、線路などの鉄道インフラ(下部構造)の建設・管理と車両などの上部構造の運行・運営を別の経営主体が行う上下分離方式が進み、第1種から第3種まで鉄道事業者は多岐にわたっている。通常は第1種事業者を鉄道事業の典型とみなすが、自らが運行を行わない神戸高速鉄道株式会社や独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構なども、法的には鉄道事業者(第3種)に入る。

 第1種鉄道事業者を念頭に置くと、鉄道事業は固定費用が莫大(ばくだい)であり、いったん投下した資金は市場から撤退しても回収できないために参入退出が容易ではないことから、従来規制緩和を行いにくいとされてきた。しかし上下分離方式の導入など規制緩和の余地はあり、1997年(平成9)には運賃規制が上限運賃制に移行し、1999年には鉄道事業が許可制となっている。

 大都市で鉄道サービスを提供する都市鉄道では、少子高齢化に伴って総じて輸送量が減少傾向にある一方で、バリアフリー化などの収益に直接結び付かない支出が増えており、鉄道会社の経営状況の悪化が懸念されている。また、地方のローカル線を運営する地方鉄道も、都市部以上の人口減とモータリゼーションの進展により、路線の廃止に関する問題が深刻になりつつある。また、公営の鉄道事業者(市営地下鉄など)や第三セクター鉄道事業者は、これらの問題に加えて経営の不効率性を指摘されることもある。

[竹内健蔵]

『杉山武彦監修、竹内健蔵・根本敏則・山内弘隆編『交通市場と社会資本の経済学』(2010・有斐閣)』『塩見英治編『現代公益事業――ネットワーク産業の新展開』(2011・有斐閣)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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