日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
モース(Samuel Finley Breese Morse)
もーす
Samuel Finley Breese Morse
(1791―1872)
アメリカの画家、電信の発明者。モールスともよばれる。マサチューセッツ州チャールズタウン生まれ。父ジェディダイアJedidiah(1761―1826)は有名な組合協会牧師で地理学者であった。1810年エール大学を卒業、肖像画家を志し、ナショナル・デザイン・アカデミーの初代校長、ニューヨーク大学の美術教授を務めた。1829~1832年フランスとイタリアに美術遊学、その帰途の船中で最新の電磁気学のことを知り、航海中に電信機の構想をまとめた。ニューヨーク大学のアトリエを実験室にし、大学の同僚ゲールLeonard Gale(1800―1883)の協力を得、点と線で表す電信符号は彼自身がくふうした。
1837年9月、最初の公開実験を、大学構内に張り渡した電信線によって行った。これを参観した鉄工場主ベイルAlfred Vail(1807―1859)が資金と工場を提供することになった。またベイルは電信符号も改良した。1838年ワシントンで公開実験をしたが議員たちの支持は得られず、ヨーロッパでの特許権の獲得にも失敗。1843年ようやくワシントン―ボルティモア間の試験線架設費3万ドルの予算を獲得、翌1844年5月24日、有名なことば「What hath God wrought(神がなせし業(わざ))」をベイルに送信した。1856年に実業家シブリーHiram Sibley(1807―1888)の指導でウェスタン・ユニオン電信会社を設立し、多くの企業を合併して成功、長年の労苦が報われた。没年までにモースの電信機とモールス符号はヨーロッパのほとんどの国に採用され、17か国から勲章を授与された。
[山崎俊雄]