日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラジウム療法」の意味・わかりやすい解説
ラジウム療法
らじうむりょうほう
radium therapy
放射性同位元素(ラジオ・アイソトープ)のラジウム(原子番号88、原子量226)から出る放射線を用いる療法のことで、α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線が放出され、この3種とも放射線治療が可能であるが、現在ではほとんどγ線のみが利用されている。ラジウムの半減期は1590年で、半永久的に使用できる。
ラジウム治療器具としては、白金製の管や針がある。ラジウム管とは、ラジウムを管状の白金容器に密封したものであり、ラジウムの量は一般に10~30ミリグラムである。ラジウム針は、ラジウム管と同じく針状の白金容器にラジウムを密封したもので、針長は10~40ミリメートル、ラジウムの量は1~10ミリグラムである。
ラジウム管は腔(くう)内照射に使われ、主として子宮頸癌(けいがん)に用いられる。子宮腔内と腟(ちつ)内に挿入する。ラジウム約100ミリグラムを1回につき20時間くらい挿入しておく。1週間に1回、合計3回ほど行う。最近では、コバルト60などを遠隔操作式で挿入する方法がとられるので、行われない。このコバルト60などを遠隔操作式で挿入する方法は小線源治療装置ともよばれ、1960年以降増加している。遠隔操作して術者の安全を守る体内照射装置で、10キュリー程度の線源である。大量に体外から照射するコバルト60大量遠隔照射装置とは別のものである。
ラジウム針は組織内照射に利用され、多くの頭頸部癌、とくに口腔癌によく使われる。舌癌では、癌のある舌の部分に局所麻酔下でラジウム針を普通10本前後刺入する。約1週間、刺したままにしておく。舌癌の原発巣に対する治療法として第一に選択されるのは、このラジウム療法である。
[赤沼篤夫]
『尾内能夫著『ラジウム物語 放射線とがん治療』(1998・日本出版サービス)』