改訂新版 世界大百科事典 「ラプソディ」の意味・わかりやすい解説
ラプソディ
rhapsody
即興性を重んじた楽曲の一形式で,〈狂詩曲〉と訳される。古代ギリシアの吟遊詩人たちが朗唱した,おもにホメロスの叙事詩の断章であるrhapsōǐdiaに由来する。音楽上のラプソディは,そこから断章としての性格と即興性に富んだ自由な形式を受け継ぎ,ロマン派初期においてトマーシェクVáclav Jan Křtitel Tomášek(1774-1850)らの抒情的ピアノ小品(キャラクター・ピース)の形でまず現れた。リストの19曲からなる《ハンガリー狂詩曲》(1885)はそうしたラプソディの頂点をなす作品である。そのうちの数曲は管弦楽用に編曲され,19世紀後半以後の民族的性格の強い管弦楽用のラプソディ(ドボルジャークの《三つのスラブ狂詩曲》(1878),アルベニス(1887)やラベル(1908)の《スペイン狂詩曲》など)の創作を刺激した。なおブラームスのアルト独唱と男声合唱のための声楽曲《アルト・ラプソディ》(1869)は,ゲーテの《冬のハルツ紀行》の断片に作曲されたという点で,ラプソディの原義に近い作品である。現代ではガーシュウィンの《ラプソディ・イン・ブルー》が有名である。
執筆者:高野 茂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報