日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルベニス」の意味・わかりやすい解説
アルベニス
あるべにす
Isaac (Manuel Francisco) Albeniz
(1860―1909)
スペインの作曲家、ピアノ奏者。カタルーニャ地方に生まれる。4歳でデビューしたといわれるほどの神童で、6歳のときにパリでマルモンテルに師事、8歳から演奏旅行を始めた。しかし冒険を好み、12歳のときには1人で中南米に密航するなど放浪の一生を送ったためか腎臓(じんぞう)病に苦しめられ、スペイン国境に近いフランスのピレネー地方で49歳の生涯を終えた。彼の演奏技巧の完成には1880年のリストとの出会いによるところが大きいが、もう一つの転機はその3年後、バルセロナに居を構えたときに訪れる。演奏よりも作曲活動を優先させ、故国の音楽を素材とした作品を書き始めたのである。1893年、ロンドンからパリへ活躍の舞台を移し、ダンディ、デュカスらと交際、ドビュッシーやラベルなどのフランス近代音楽に強い影響を与えた。彼の本領はサルスエラ(スペインの歌劇)や歌曲よりもピアノ曲にあり、代表作に『スペイン組曲』(1886)、『旅の思い出』(1887)、『イベリア組曲』全4巻(1906~1908)がある。とくに『イベリア』は高度な演奏技巧、ギターやカスタネットの模倣など大胆な効果を駆使した傑作で、F・アルボースの管弦楽編曲でも有名。
[関根敏子]