ランス(フランス、マルヌ県の都市)(読み)らんす(英語表記)Reims

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ランス(フランス、マルヌ県の都市)
らんす
Reims

ランス北部、シャンパーニュ地方の主要都市の一つで、マルヌ県の副県都。人口18万7206(1999)、18万4076(2015センサス)。パリ北東142キロメートル、東部高速道路に沿い、道路・鉄道が集中する交通の要衝。裁判所、大司教座、大学(1962創立)の所在地で、産業の中心は第三次産業であるが、機械、電気、ガラス、食品、繊維などの工業も発達する。シャンパーニュ・ワインの醸造中心地で、チョーク質土壌の地下トンネルに貯蔵される。典型的なゴシック様式ランス大聖堂(13世紀)、ロマネスク本堂とゴシックの内陣からなるサン・レミ・バシリカ(11~12世紀)、サン・ドニ修道院跡の美術館、ガリア・ローマ時代の市門など、歴史的建造物が多く、観光中心地ともなっている。

[大嶽幸彦]

歴史

ガリア時代にレミRemiとよばれたケルト人の繁栄の中心地で、カエサルに征服されたのちローマ化していった。3世紀に司教座が置かれたが、406年バンダル人の、451年フン人の略奪を受けた。496年フランク国王クロービス1世はソアソン戦勝のあとここで聖レミギウスRemigius(437?―533)の手で洗礼を受け、ローマ・カトリックに改宗した。このことはランスに宗教的威光を与え、10世紀末からフランス王を聖別する特権がランスの大司教に付与され、フィリップ4世以後アンリ4世とルイ18世を除くすべてのフランス王はランスの教会戴冠(たいかん)式を行った。なかでも有名なのがジャンヌ・ダルクが出席したシャルル7世のそれである(1429)。中世以来ランスはまた経済活動の拠点でもあり、とくに毛織物工業は有名で、ルイ14世の財務総監コルベールはここの毛織物商人の息子であった。シャンパーニュ地方のぶどう酒の集荷地としても名高いこの町は、1814年には対仏同盟軍に占領され、プロイセン・フランス戦争、第一次世界大戦にはドイツ軍の根拠地でもあった。

[志垣嘉夫]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android