リスト(Franz von Liszt、刑法学者)(読み)りすと(英語表記)Franz von Liszt

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

リスト(Franz von Liszt、刑法学者)
りすと
Franz von Liszt
(1851―1919)

ドイツの刑法学者。ギーセンマールブルクハレベルリンの各大学教授を歴任。作曲家フランツ・リスト従弟(いとこ)にあたる。ウィーンの名門の家に生まれ、ウィーン大学在学中イェーリングから法の目的思想、ワールベルクWilhelm Emil Wahlberg(1824―1901)から進化論的刑法観を学ぶ。これを基礎として独特の実証主義刑法学を築き上げ、これをひっさげて伝統的な古典学派の学者たちと論争を重ね、名実ともにドイツ近代学派の総帥となった。マールブルク大学での就任講演『刑法における目的思想』(1882)は「マールブルク大学綱領」ともよばれ、数ある彼の作品のなかでも、26版を重ねた『ドイツ刑法教科書』(1882)と並ぶ名著とされている。1881年ハレ大学教授ドヒョーAdolf Dochow(1844―1881)と組んで『全刑事法雑誌』を発刊。1889年オランダのハメルGerard Anton van Hamel(1842―1917)、ベルギーのプリンスAdolphe Prins(1845―1919)と共同して国際刑事学協会(IKV)を設立した。1902年ベルリン大学教授カールWilhelm Kahl(1849―1932)と協力して刑法改正事業開始端緒を与え、1909年に政府の刑法改正予備草案が公表されると、カール、リリエンタールKarl von Lilienthal(1853―1927)、ゴールトシュミットJames Paul Goldschmidt(1874―1940)と4人の連名で「対案」を発表するなど、その学界活動も群を抜いて華々しかった。

西原春夫

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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