リンパ脈管筋腫症(読み)リンパミャクカンキンシュショウ

  • リンパみゃくかんきんしゅしょう〔ミヤククワンキンシユシヤウ〕
  • リンパ脈管筋腫症(胸部リンパ系疾患)

内科学 第10版の解説

(1)リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)
概念
 リンパ脈管筋腫症は,妊娠可能な女性に好発し,肺胞,細気管支,血管,リンパ管周囲,縦隔や腹腔リンパ節に平滑筋様細胞(LAM細胞)が増生し,広汎に肺が囊胞化する比較的まれな疾患である.従来本症の予後は著しく悪く,大半の症例は発症後10年以内に死亡するとされていたが,最近では比較的良好な予後も報告されている.
病因
 LAMは常染色体優性遺伝性疾患である結節性硬化症(tuberous sclerosis complex:TSC)の肺病変(一部分症)として発生する場合(TSC-LAM)と,単独で発生する場合(sporadic LAM)の2型がある.TSC-LAMは TSC1 あるいは TSC2 遺伝子のどちらの異常でも発生し得るが,sporadic LAMはTSC2遺伝子異常により発生する.TSC遺伝子異常によりmTORが恒常的に活性化されたLAM 細胞は,増殖・転移して,リンパ節や肺にびまん性,不連続性の病変を形成すると考えられている.また,リンパ管新生により乳び漏,リンパ浮腫を生ずる.
臨床症状
 初発年齢は平均32歳で,主症状は,気胸と労作時呼吸困難,咳,血痰などで,気胸はしばしば反復し,両側性に生ずることもある.乳び胸水や腹水を合併することもある.本症の肺外病変として約30〜50%に腎血管筋脂肪腫を合併する.腎血管筋脂肪腫を有する女性では本症の合併を念頭において胸部CTを撮影すべきである.結節性硬化症を合併している場合には,顔面の血管線維腫,爪囲線維腫,白斑などの皮膚病変を認めることもある.
診断
 胸部X線所見は粒状網状影を呈し,病変の進行とともに過膨張を呈する.胸部CTでは特徴的な両肺びまん性に分布する数mm〜30 mm大の薄壁の小囊胞を認め,診断に有用である(図7-13-1).LAM 細胞による細気管支閉塞による air trapping や LAM細胞からのマトリックスメタロプロテナーゼ 2 産生などの機序により囊胞形成が起こる.他のCT所見として縦隔リンパ節腫脹,気胸,乳び胸水,腹部では腎血管筋脂肪腫,後腹膜や骨盤腔のリンパ節腫脹,乳び腹水などを認めることがある.
 呼吸機能検査では,閉塞性換気障害(1秒量,1秒率低下),残気率上昇,拡散能障害ならびに低酸素血症は高率に認められ,病変の進行とともに高二酸化炭素血症を伴うこともある.
 確定診断において特徴的な病理組織所見は肺胞壁,胸膜,肺脈管系に沿ってLAM細胞が不連続性に増殖し,末梢気腔の破壊による囊胞形成が認められる.免疫組織染色ではエストロゲン・プロゲステロン受容体,メラノーマ関連抗原(HMB45)などがLAM細胞に陽性となる.診断方法は経気管支肺生検(TBLB)でも可能であることから,まずTBLBが優先され,診断不可能な場合は胸腔鏡下肺生検が行われる.乳び胸水や腹水中のLAM細胞クラスターを証明することも可能である.血清vascular endothelial growth factor (VEGF)-D値の高値も補助診断になり得る.鑑別疾患としては肺気腫,Langerhans細胞組織球症などがある.
治療
 本症が妊娠可能な女性に好発することからその病態として女性ホルモンの関与が注目され本症に対するホルモン療法としてエストロゲン供給源除去を目的とした卵巣摘出術,エストロゲン拮抗作用をもつプロゲステロン,エストロゲン受容体の結合を遮断するタモキシフェン,LH-RHアゴニストによる偽閉経療法(GnRH療法)などがおもに行われている.また,分子標的治療としてmTOR阻害薬(シロリムス)が期待されている.閉塞性換気障害に対しては,気管支拡張薬の投与を行う.さらに最近,わが国でも終末期のLAM患者に肺移植が行われている.[本間 栄]
■文献
Light RW: Chylothorax and pseudochylothorax. In:Pleural Diseases, 5th ed. pp346-361, Philadelphia, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2007.
McCormack FX, Inoue Y, et al: Efficacy and safety of sirolimus in lymphangioleiomyomatosis. N Engl J Med, 364: 1595-1606, 2011.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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