ワッパ一揆(読み)わっぱいっき

改訂新版 世界大百科事典 「ワッパ一揆」の意味・わかりやすい解説

ワッパ一揆 (わっぱいっき)

1874年山形県庄内地方で起こった貢租過納金の払戻しを要求した一揆。山形県庄内一揆,田川・飽海二郡騒擾ともいう。当時の酒田県は明治政府による地租の石代納許可,雑税の廃止を布告せず,旧税法によっていた。このため農民たちは過納金がワッパ(木製の弁当箱)に1杯ずつ配分されるほどあるとし,この一揆をワッパ一揆と呼んだ。1874年1月,農民代表たちは雑税廃止,石代納の許可を県庁に請願したが,県は農民代表を投獄した。ここから徴税のための諸帳簿の公開,貢租過納金の返還を要求する騒動に発展した。農民たちは士族金井質直・本田允釐(いんり)兄弟の指導で石代会社を設立し,さらに酒田の商人森藤右衛門の指導をえて要求実現にあたった。同年12月酒田県令となった三島通庸は農民側を厳しく弾圧したが,翌年森の建白によって元老院の調査が行われた。そして76年4月から司法省臨時裁判所が鶴岡に設けられ,翌年6月ようやく判決が下された。これにより,農民の見込んだ過納金総額20万円に対し6万3000余円の返還が認められた。
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百科事典マイペディア 「ワッパ一揆」の意味・わかりやすい解説

ワッパ一揆【ワッパいっき】

明治初期,現在の山形県庄内(しょうない)地方(当時は酒田県)に起こった貢祖過納金の払戻しを求める農民闘争。田川・飽海(あくみ)二郡騒擾(そうじょう)ともいう。酒田県(1875年鶴岡県と改称,1876年に山形県に統合)では政府の税制改革(石代納許可,雑税廃止)以後も旧税法によっていた。1874年農民は雑税廃止と石代納許可,帳簿の公開,過納租税返還を県に要求,政府は三島通庸を酒田県令に任命して大弾圧を試みたが,翌1875年酒田の商人森藤右衛門らの建白により元老院が調査,1878年農民に有利な判決が下ったが,以後も三島の弾圧は続いた。なおワッパは農民の木製弁当箱のことで,過納金を配分すればワッパ一杯分にもなるほどということで名付けられた。

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