1杯だけしか食べぬ食べ方,またはおかわりのないように丼に高盛りにして出す飯の出し方をさす。現在の食事の礼儀作法からは一膳飯は嫌われ,一口でもよいから飯は2膳食べるものとしつける家庭が多い。これは一膳飯が死者の枕元に供える枕飯や葬式の食別れの飯を連想させるためで,飯に箸をつきたてることと同様に忌まれている。葬儀だけでなく婚礼でも〈鼻つき飯〉〈高盛り飯〉として一膳飯を出す所は多い。また日光輪王寺の〈強飯(ごうはん)式〉,京都北白川の天神宮の祭礼では,儀礼的に高盛りにした飯を食べる。絵巻物に散見されるところによると,中世くらいまでは飯を高盛りにしてそのまわりに副食の小皿を置く配膳法をとっていたようである。現在高盛りの一膳飯は儀礼の中だけに見られるが,ただ,食堂の丼飯などでは手間を省くためこの盛り切りの出し方をする。
→椀飯(おうばん)
執筆者:坂本 要
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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