埦飯(読み)おうはん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「埦飯」の意味・わかりやすい解説

埦飯
おうはん

椀飯の字をあてることもあり、「おうばん」とも読む。垸飯とも書く。椀(わん)に盛った飯の意で、饗応(きょうおう)の一形式。村上(むらかみ)天皇(在位946~967)のころからその存在が知られ、公卿(くぎょう)が殿上に集まったとき互いに饗応したことをいった。もともと公家(くげ)の制度であったが、鎌倉幕府の成立以後、武家にも採用されるようになり、武家の饗礼として正月に臣下が将軍を饗応するなど、主要な行事となった。室町幕府ではさらに発達しその規式も整った。正月の朔日(ついたち)は管領(かんれい)、2日は土岐(とき)氏、3日は六角氏、7日は京極氏、15日は山名氏というように、有力守護が幕府において将軍を饗した。応仁(おうにん)の乱(1467~77)以後は衰微していった。「大盤振舞」は当て字で、これは江戸時代になって町人の間で行われた正月のせちぶるまいのことである。

[酒井信彦]

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