出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
死者の枕元に供える盛り切りの飯。人の死後ただちに、お椀(わん)の蓋(ふた)すり切りの米を、とがずに、日常のかまどとは別に臨時のかまどを設け、鍋(なべ)・釜(かま)に蓋をせずに炊き、炊いただけを茶碗(ちゃわん)に盛るなどの作法がある。茶碗は死者が生前に常用したものを使い、箸(はし)を1本か2本、飯の上に突き立てたり、1本を立て1本を横に挿す例もある。飯の一部を小さな握り飯にして上にのせ、散飯(さば)とよぶ地方もある。日常の食事で、一膳飯(いちぜんめし)や箸を立てることを忌むのは、枕飯を連想するため。枕飯は祭壇に移し、葬列ではお膳にのせて相続人の妻が持つ。墓前に供えるのが一般で、埋葬した上に霊屋(たまや)を設ける場合はその中に入れる。枕団子を伴うことが多い。
[井之口章次]
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