江戸時代の女髷(まげ)に用いる和紙による髪飾の一種。実用性のみの髪を束ね結う撚元結(よりもとゆい)と,装飾性をも兼ね備えた平元結(ひらもとゆい)とは,近世中ごろまでの女髷を形づくる過程に用いられてきた。宝暦年間(1751-64)ころより髪形が複雑になり,撚元結と装飾のみに用いる丈長の2種に大きく分けられ,平元結は姿を消した。丈長は平元結の一種で,ほぼ40cm以上のものを用い,結び方も二重回しにしたり,結ばずに合せ掛けにするなど種々の装飾的な形式が作られた。幅は2~3cmのものを四つ折にしたものが初期の形式で,丈も幅も徐々に広く長くなり,一時は鬢(びん)や髱(たぼ)の下に長くはみ出して掛けるのが流行した。《江戸紫》(1764-72)には丈長の掛け方が記されているが,〈丈長何事もとし相応と言ながら,すんなりと有りたし,長くたれさがりたるは,いやらしとやいはんか〉とある。浮世絵では鈴木春信一派の髪形によく丈長の状態が描かれている。明治以降は,花嫁の文金高島田や芸者の島田髷に受けつがれ,紅白その他の色が使われ,金銀の泥(でい)や箔(はく)で模様が施されたものが作られている。これを髷の根元に巻くので根掛(ねがけ)ともよばれている。
→髪形
執筆者:橋本 澄子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…近世,女子が下げ髪から髷を結うようになると,髪飾は飛躍的に発達し,多種多様なものがでてきた。江戸時代には,櫛,簪,笄のほか,掛物といわれる手絡(てがら),丈長(たけなが),根掛(ねがけ)などが用いられた。掛物は元結と共に,いわゆる日本髪に使われる髪飾である。…
※「丈長」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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