杉原紙(読み)スギハラガミ

百科事典マイペディアの解説

杉原紙【すぎはらがみ】

コウゾを原料とした手すき和紙奉書紙に似て柔らかいが,やや薄い。名は平安時代に播磨(はりま)にあった藤原家の荘園椙原庄(すぎはらしょう)で作られたことに由来する。鎌倉期以降さかんに製造されるようになり,需要の増加にともなって各地で杉原紙に似た紙がすかれ,越前杉原,備中杉原,加賀杉原などの名で呼ばれた。杉原紙はとくに武士僧侶の間で慶弔用に用いられたほか,贈答用,目録用,錦絵(にしきえ)用などに広く使用された。小判の小杉原は男子用の高級懐紙として好まれた。近代以降,生産が絶えていたが,1972年,発祥の地である兵庫県加美町(現・多可町)に杉原紙研究所が設けられて以来,再び生産されている。
→関連項目加美[町]糊入紙半切

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デジタル大辞泉プラスの解説

杉原紙

兵庫県多可郡多可町で生産される和紙。原料はコウゾなど。名称は、7世紀頃に同町加美区の北部に位置する杉原谷地区で、杉原紙の前身となる「播磨紙(はりまのかみ)」の製造が始まったことにちなむ。一時期製造が途絶えたが、当時の加美町が1972年に「杉原紙研究所」を設立して復活。1983年には県の重要無形文化財に指定。

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世界大百科事典 第2版の解説

すぎはらがみ【杉原紙】

中世に武士や僧侶が贈物に盛んに用いた和紙で,ひきつづき近世まで使われた。杉原紙の起源については,美濃説(岐阜県揖斐郡藤橋村)と播磨説(兵庫県多可郡杉原谷村,現,加美町)の論議があったが,現在は播磨説が定説となっている。この地は椙原(すぎはら)庄とよばれ平安時代から製紙が行われていたが,盛んになったのは鎌倉時代以後で,とくに武士や僧侶の間で〈一束一本〉(杉原紙1束(10帖)に末広1本を加える),〈一束一巻〉(杉原紙1束の上に紋緞子1巻をおく)などと称して贈物に使われた。

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大辞林 第三版の解説

すぎはらがみ【杉原紙】

鎌倉時代以降、播磨国杉原谷村(兵庫県多可町)で産した紙。奉書紙風でやや薄く、武家の公用に用いられ、また贈答品ともされた。江戸時代には各地で漉かれ、一般に広く使われた。すぎはら。すいばら。

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事典 日本の地域ブランド・名産品の解説

杉原紙[紙工芸・和紙]
すぎはらがみ

近畿地方、兵庫県の地域ブランド。
多可郡多可町で製作されている。楮を原料とする和紙。1970(昭和45)年に昔ながらの技術技法が再現され、今日では書道用和紙やカラフルな民芸紙類が漉かれている。兵庫県伝統的工芸品。

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精選版 日本国語大辞典の解説

すぎはら‐がみ【杉原紙】

〘名〙 鎌倉時代、播磨国揖東郡杉原村(兵庫県多可郡加美町)で産したといわれる紙。奉書紙に似てやや薄く種類が豊富で、主に武家の公用紙として用いられた。のち一般に広く使われるようになると各地で漉(す)かれた。近世から明治にかけて色を白くふんわりと仕上げるために米糊(こめのり)を加えて漉かれ、「糊入れ紙」「糊入れ」と称された。すぎはら。すいばら。すぎわらがみ。
北条九代記(1333頃)上「承久元年己卯〈略〉、杉原紙始而流布」

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世界大百科事典内の杉原紙の言及

【因州紙】より

…しかし,しだいに伯耆は鉄,因幡は紙と代表的な産物が分かれていった。中世の中央の文献に因幡紙の名は出てこないが,中世末期の事情を反映している江戸初期の《毛吹草》には,用瀬(もちがせ)町家奥の椙原(すぎはら)(杉原紙)と河原町曳田(ひけた)の鼻紙が因幡の名産とされている。《紙譜》(1777)には,各種の奉書と杉原紙(地肌が美しいと評判)とともに,小半紙,小杉,障子紙などの日用品があげられている。…

【加美[町]】より

…加古川支流の杉原川上流域を占め,町域の大部分が山林である。平安時代からコウゾを原料とする杉原紙の産地として知られ,江戸後期まで和紙の生産が盛んであった。明治になって和紙の生産は衰え,大正時代には廃絶されたが,現在は杉原紙研究所が設けられ,伝統技術の保存につとめている。…

【畳紙】より

…〈たたみがみ〉の音便で,衣冠束帯のときに懐中する紙をいう。帖紙とも書く。《枕草子》に〈みちのくに紙の畳紙の細やかなるが〉とあり,最初はあまり厚くない檀紙(だんし)をたたんだものと想像される。のちには〈引きあわせ〉〈杉原〉など,主としてコウゾ系統の厚様(あつよう)が使われたが,ガンピ系統の〈鳥の子〉の例もないではない。武家では〈杉原〉を使うのが故実であるが,直垂(ひたたれ),狩衣(かりぎぬ),大紋などを着るときは必ず色目のあるものを用いたという。…

【播磨国】より

…農林業でいえば13世紀の国内の山林荒野の開発はめざましく,1276年(建治2)播磨淡河(あわかわ)荘と摂津山田荘の境界争いは,相互の開発拡大が国境争いにまで到達したものといえよう。手工業でも,杉原紙は近衛家領椙原荘が中心であり,また1191年の長講堂領目録には松井荘の特産として鍋や鉄輪がみえるのも,製鉄や鋳物業の発達を物語る。それにともない交易市場や物資集散港が発達する。…

※「杉原紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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