チベット・ビルマ語派の言語を話すモンゴロイド系の民族集団で、インド北東部のブラマプトラ平原とミャンマー(ビルマ)北部のチンドウィン渓谷以西の山脈に挟まれた山岳地帯に住む。彼らはヒンドゥー文化とビルマの仏教文化の境界地帯にまたがる地域に居住しているにもかかわらず、これら二つの文化とはまったく異なる文化をもつ。ナガの文化は、東南アジアの大部分に分布する有史以前の古代文化の名残(なごり)と考えられている。台湾、フィリピン、ボルネオ島の古代高地民族の文化との間にはいくつもの類似点がみいだされ、これらとのつながりは、新石器時代にさかのぼる。ナガはアンガミ、レングマ、ロタ、アオ、コニヤク、サンタン、チャングなどのグループに分類され、かつては部族間で戦争や首狩りを行った。生業は焼畑耕作であるが、居住地そのものを移動することはなく、何代にもわたって同じ村に住む。彼らの村は大規模で密集しているのが特徴である。外婚制の父系クラン(氏族)組織をもっており、全村を統制するような首長制度はなく、部族によっては年齢集団が政治権力を行使することもある。ナガはまた、社会的名声を得ようとする者が、ウシやブタの供犠を行い勲功祭宴(くんこうさいえん)を催すことでも知られる。アンガミ・ナガでは、獲得した威信を保つために、石柱や石板などの巨石記念物を立てる習慣がある。
[清水 純]
フィリピン,ルソン島南東部のビコル半島にある古い都市。南カマリネス州の州都。人口13万7810(2000)。1573年に建設されたフィリピン最古のスペイン集落の一つで,旧称をヌエバ・カセレスNueva Caceresといい,長い間ビコル地方における植民地支配,カトリック教会行政の中心地であった。マニラからビコル半島に抜ける鉄道,幹線道路はすべてここに集まる交通の要衝であるとともに,肥沃で広大なビコル平野を後背地にもつ一大商業中心地であり,州都のみならずビコル地方全体の行政中心でもある。
執筆者:梅原 弘光
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