不定期航空(読み)ふていきこうくう

改訂新版 世界大百科事典 「不定期航空」の意味・わかりやすい解説

不定期航空 (ふていきこうくう)

航空法に定める航空運送事業の種別の一つで,定期航空以外の事業をいう。臨時便のように路線は決まっているが季節性等の理由で定時性を欠くものや,運航区域が限定されている遊覧飛行も不定期航空である。ICAO(国際民間航空機関)の統計でも,用機者との賃貸借契約により航空機の全部または一部を使用して有償貨客を輸送するチャーター便,定期便の一部か全部を定期便としてでなくチャーター便として運航するブロック・オフ・チャーターなども不定期航空としている。このように,不定期航空は不定期航空会社だけでなく,定期航空会社またはその子会社によっても実施される。

 第2次大戦直後の日本の場合,不定期航空は定期航空へのステップ的な傾向が強く,バス会社なみに乱立した国内線各社は,設立の当初は不定期航空の免許をとり,定期便に近い運航の実績を積んだのち定期航空に転向するケースが目だった。チャーター輸送は世界的に着実に伸びているが,発展の形態は国や地域により異なっている。アメリカではチャーター会社が主として軍事目的達成への補助的手段として発達してきたのに対し,ヨーロッパでは北欧3国,イギリスドイツなど,アルプスより北の年間を通じて日照時間の少ない国の人々が,夏に南欧北アフリカに健康保持のため太陽を求めて移動する手段として発展した。なお,近年の航空機の大型化にともなう大量高速輸送時代の到来とともに,ホテル代,食費,地上交通費等を航空運賃とともにパックした観光客を対象とする包括旅行の普及で,チャーター市場はさらに拡大しつつある。日本も東南アジア各地,中部・南部太平洋地域を対象にチャーター輸送が発達し,不定期輸送の定期便化が目だっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「不定期航空」の意味・わかりやすい解説

不定期航空
ふていきこうくう
non-scheduled air service

航空運送事業のうち,運航日時が固定されていないもの。日本の法律では遊覧飛行なども含まれる。事業形態としては輸送需要の増減の幅が大きな区間に適し,観光需要の増大に伴って欧米では運賃の低廉なチャータ便として,インクルーシブ・ツアー (ホテル代や食事料金など一切の旅行費用を含んだパッケージ・ツアー) に組み込まれるかたちの運航が多くみられ,チャータ専門の航空会社も多数存在する。特に北部ヨーロッパでは,国際航空運送量の半分がチャータ便で占められている。日本では日本航空,全日本空輸,日本アジア航空などが国際不定期便を運航しているが,チャータ便に対する規制が厳しいため,欧米のようなインクルーシブ・ツアーと結びついた不定期航空は現在のところあまり盛んではなく,国際航空輸送量の大半が定期航空によって運ばれている。

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世界大百科事典(旧版)内の不定期航空の言及

【国内航空】より

…日本の場合,1997年現在で定期航空運送の免許をうけているのは,日本航空,全日本空輸,日本エアシステム,日本貨物航空,日本トランスオーシャン航空,エアーニッポン,日本エアコミューターおよび日本アジア航空の8社であるが,日本アジア航空と日本貨物航空は国内線を運航していない。不定期航空は定期航空事業と兼営している上記8社に加え,航空機使用事業と兼営して遊覧飛行を行っているものが61社ある。 国内航空輸送の試みは1910年ごろヨーロッパで始まっているが,最初の定期旅客サービスは14年に4ヵ月間就航したアメリカのセント・ピーターズバーグ・タンパ航空といわれている。…

※「不定期航空」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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