不感蒸散(読み)フカンジョウサン(その他表記)insensible perspiration

デジタル大辞泉 「不感蒸散」の意味・読み・例文・類語

ふかん‐じょうさん【不感蒸散】

不感蒸泄

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改訂新版 世界大百科事典 「不感蒸散」の意味・わかりやすい解説

不感蒸散 (ふかんじょうさん)
insensible perspiration

不感蒸泄ともいう。体重を鋭敏な体重計で測ると,その指針が時々刻々と体重の軽くなる方向に動いていくことが見られる。このような不断の体重減少はS.サントリオによって初めて観察された。生体成分(おもに水分)が気体の形で自身でも気がつかないうちに常時体外に放散されていることが原因であり,不感蒸散と呼ばれる。これには呼吸性不感蒸散皮膚性不感蒸散の2者が含まれる。呼吸性不感蒸散には,呼吸気道の粘膜面から水分が蒸発して呼気中に放出されるためのものと,呼吸により摂取された酸素よりも排出される炭酸ガスのほうが重いのでその差による体重減少との二つが含まれる。ただし後者は量的にわずかで全不感蒸散量の10%弱にしかすぎない。皮膚不感蒸散は体液水分が皮膚組織を水蒸気の形で拡散,通過して外気中に放散されるもので,のように,体液が液体の形で皮膚表面に運ばれ,そこで初めて蒸発するのとは根本的に異なる。

 不感蒸散量は単位体表面積(m2)当りで表されるが,日本人成人で快適気温下では1日約900g程度で,これにより失われる熱量は総熱放散量のほぼ1/4に相当する。呼吸性不感蒸散と皮膚性不感蒸散の比は約3対7といわれるが,不感蒸散総量は外気の湿度温度(正確には両者の総合としての水蒸気圧mmHg)によって非常に異なる。高温高湿の環境では,呼吸性,皮膚性蒸散ともに著しく減少する。また,たとえば通気性の悪い被服着用時には,皮膚不感蒸散の水分によって衣服下空気層の湿度が上昇し,低温に遭うとこの水分が凝縮し着衣をぬらし,その保温性にも影響することがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「不感蒸散」の意味・わかりやすい解説

不感蒸散
ふかんじょうさん
insensible perspiration

発汗や排尿がまったくなくても、成人では1日約900ミリリットルの水分蒸発がある。このうち約3分の2は皮膚面からの蒸発で、残り3分の1が呼吸気道からの蒸発である。このような水分の蒸発は尿や汗などと異なり感覚されないので不感蒸散(不感蒸泄(じょうせつ))とよばれる。

 ヒトの場合、1グラムの水分の蒸発によって0.58キロカロリーの気化熱が体から奪われるので、1日の不感蒸散による熱喪失量は520キロカロリーにも達することとなる。この量は、安静時における物質代謝量の約3分の1に相当する。ヒトが体温を一定に保つためには、物質代謝によってつくられた熱と等しいだけの熱が身体から放散されなければならないわけで、不感蒸散はその一つの重要な手段といえる。かつて、カーニバルの扮装(ふんそう)で全身に金粉を塗ったため、不感蒸散が障害されて熱中死した例がローマ(1473)とフィレンツェ(1513)であったといわれている。

[本田良行]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「不感蒸散」の意味・わかりやすい解説

不感蒸散
ふかんじょうさん
insensible perspiration

発汗のように意識されるものは除外して,自覚されない人体の水分の発散をいう。不感蒸散は皮膚と気道粘膜から常時行われており,成人の常態では1日平均1l内外の水分が蒸発している。このことを初めて指摘したのは,医物理学派の先駆者,イタリアの S.サントリオである。

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栄養・生化学辞典 「不感蒸散」の解説

不感蒸散

 不感蒸泄ともいう.汗でなく,皮膚の表面からの水分の逸散,肺からの水分の蒸散などをいう.

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世界大百科事典(旧版)内の不感蒸散の言及

【体温】より

…皮膚は水をいくらか透過させるから,常時皮膚面から水分が蒸発している。これを不感蒸散というが,不感蒸散は,呼吸気道からの水分蒸発も含めて,発汗のない状態で熱放散の約1/4を占めている。環境温が皮膚温より高くなると対流・放射によって逆に体が加温される。…

※「不感蒸散」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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