日本大百科全書(ニッポニカ) 「世界文化賞」の意味・わかりやすい解説
世界文化賞
せかいぶんかしょう
Praemium Imperiale in Honor of Prince Takamatsu
公益財団法人日本美術協会が協会設立100周年を記念し、1988年(昭和63)に創設した全世界の芸術家を対象とする賞。正式名称は高松宮殿下記念世界文化賞Praemium Imperiale in Honor of Prince Takamatsu。同協会総裁を58年間にわたって務めた高松宮宣仁(たかまつのみやのぶひと)親王の「世界の文化、芸術に広く寄与したい」という遺志に基づく顕彰制度である。彫刻、建築、音楽、演劇・映像の5部門があり、芸術の発展、普及、向上に顕著な貢献をした個人あるいは団体に賞が贈られる。部門ごとの受賞者(原則、毎年1名または1団体)には金メダルと賞金1500万円が授与される。1997年(平成9)には、次世代を担う才能の育成を目的とする若手芸術家奨励制度が設けられた。若手の個人や団体、若手芸術家を育成、支援している団体などが制度の対象で、選出された者には1年以内に有意義な計画を実行することが条件とされ、奨励金500万円が贈られる。授賞式はともに毎年10月に明治記念館(東京都)で、現総裁の常陸宮正仁(ひたちのみやまさひと)親王、同華子(はなこ)妃を迎えて行われる。
1989年第1回の受賞者は、絵画部門ではアメリカの抽象表現主義を代表するデ・クーニング、絵画とイラストの垣根を越えたイギリスのホックニーの2名。彫刻部門は第二次世界大戦後のイタリアで平和記念像のほとんどを手がけているマストロヤンニUmberto Mastroianni(1910―1998)。建築部門のペイは、ルーブル美術館(フランス)の増設改修案(ピラミッド型の天窓)などで有名なアメリカの建築家。音楽部門受賞のブーレーズは、第二次世界大戦後のクラシック音楽界を牽引(けんいん)し、教育家としても著名な人物。演劇・映像部門のカルネは、『天井桟敷(てんじょうさじき)の人々』(1945)などの映画で知られるフランスの映画監督であった。
日本人最初の受賞者は、第5回(1992)の演劇・映像部門で受賞した黒澤明である。第18回(2006)に絵画部門で草間彌生(くさまやよい)が日本人女性として初めて受賞した。
[編集部]