知恵蔵 「中国・期限切れ肉問題」の解説
中国・期限切れ肉問題
事件が明るみに出たきっかけは、同社元従業員の告発をもとに数カ月に及ぶ潜入取材を行ったという、上海のテレビ局による報道番組。不合格品を再利用したり、期限切れの製品を再加工したりという実態が暴露された。また、床に落ちた肉やカビで色が変わった肉を使う様子も映し出された。現場従業員は「食べても死なない」と言い放ち、こうした行為が常態化していることが明らかになった。これを受けて上海市食品監督当局が捜査に着手、各種の加工食品を違法製品と認定し押収した。日本でも、同社からチキンナゲットなど鶏肉製品を輸入していた日本マクドナルドとファミリーマートの一部商品が販売停止に追い込まれた。
中国では、2008年に有害物質が混入した粉ミルクが、13年にカドミウム汚染米が流通するなど、利益を優先するあまり消費者の健康や安全がおろそかになっていると、かねてより懸念されていた。それでも、中国国内向けの食品の安全管理は国務院の衛生行政部門(国家衛生部)が管轄するが、日本向けなどの輸出食品は国家質量監督検験検疫総局が所管し、より厳格な国際基準の衛生管理が求められる。更に、同社は米国系資本の大手企業であると共に、日本マクドナルドなどが自社のグローバル基準により認証し、品質及び衛生の管理について監視しているなどと主張していたため、安全性が確保されているものと信じられていた。ところが、組織的な違法生産が行われていたことが明らかとなり、工場責任者ら幹部5人が拘束されるなどの事態となった。中国国内の有名な外資系ファストフードチェーンのほとんどが同社と取引をしていたため、中国国内でも影響が深刻化している。
上海福喜食品から日本国内への輸入は1年間で約6千トン、うち約180トンがファミリーマート、残り全量が日本マクドナルドだったという。今回の事件でケンタッキーフライドチキンなどを運営する米ヤン・ブランズ社はOSIとの取引を打ち切り、米マクドナルドの日本・香港部門も上海福喜食品からの仕入れを停止した。OSIグループのシェルドン・ラビン会長兼最高経営責任者(CEO)は、「自分が率いる企業の価値を反映していない」と述べ、中国事業全体を徹底的に見直す方針を明らかにした。
(金谷俊秀 ライター / 2014年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報