犯人または告訴権者以外の者が、書面または口頭で、検察官または司法警察員に対し、犯罪事実を申告し、同時に訴追を求める意思表示をいう。告発は、何人(なんぴと)でもこれをすることができる(刑事訴訟法239条1項)。犯人自ら犯罪事実を申告する自首および告訴権者(被害者など)が犯罪事実を申告する告訴と区別される。官吏(国家公務員)または公吏(地方公務員)は、その職務を行うことにより犯罪があると考えるときは、告発の義務を負う(同法239条2項)。告発を受けた司法警察員は、速やかに告発に関する書類および証拠物を検察官に送付しなければならない(同法242条)。独占禁止法上の私的独占または不当な取引制限の罪、国際的協定・確定審決違反等の罪、会社活動等に関する規定違反の罪は、公正取引委員会の告発を待って、これを論ずる(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律96条1項)。すなわちこの場合の告発は訴訟条件である。この告発は、公訴の提起があったのちは、これを取り消すことができない。国税犯則取締法および関税法でも、国税犯則事件および関税犯則事件に関する訴訟条件としての告発について特別の規定が置かれている。
[内田一郎・田口守一]
犯人および告訴権者以外の第三者が,捜査機関に犯罪事実を申告し,犯人の処罰を求める意思を表示すること。犯罪があると認めるときは,だれでも告発をすることができる(ただし,故意に偽りの告発をしたときは虚偽告訴罪(刑法172条)ないし虚構犯罪申告罪(軽犯罪法1条16号)に問われることがある)。とくに公務員は,職務上犯罪を発見したときは,告発をする義務がある(刑事訴訟法239条)。告発の方式や告発後の手続は,告訴の場合にほぼ準ずる(241~243条,260~262条,検察審査会法30条)。告発は,一般的には捜査の端緒となるにすぎないが,一定の犯罪に関しては,告発がないかぎり公訴の提起が許されない場合がある。独占禁止法89~91条の犯罪(公正取引委員会の告発が必要。独占禁止法96条),公職選挙法253条1項の犯罪(選挙管理委員会の告発が必要。公職選挙法253条2項)などがその例である。これらの場合の告発をめぐる法律関係は,親告罪における告訴についてと同様である。
→告訴
執筆者:長沼 範良
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