日本大百科全書(ニッポニカ) 「中小企業基盤整備機構」の意味・わかりやすい解説
中小企業基盤整備機構
ちゅうしょうきぎょうきばんせいびきこう
中小企業の事業活動を支援する目的の独立行政法人。英語名はOrganization for Small & Medium Enterprises and Regional Innovation,JAPAN。略称は中小機構。特殊法人改革の一環として、中小企業総合事業団(信用保険部門を除く)、地域振興整備公団(地方都市開発整備等業務を除く)、産業基盤整備基金(省エネ・リサイクル業務を除く)の3法人を統合し2004年(平成16)7月に発足。根拠法は独立行政法人中小企業基盤整備機構法(平成14年法律第147号)。所管官庁は経済産業省。中小企業の成長段階にあわせ、投融資や債務保証などの資金援助、ビジネスマッチング、経営相談、人材育成などのサービスを提供する。資金援助では、新事業の創出、事業承継、農商工連携などに取り組む中小企業に対し、投資ファンドへの出資を通じて支援。施設整備への高度化融資や、再生ファンドや再生支援機関と連携した再生支援を実施している。ビジネスマッチングでは、インターネットを活用して海外の企業とつなぐ「J-GoodTech(ジェグテック)」や伝統技術・素材とバイヤーを結ぶ「Rin crossing(リンクロッシング)」などのマッチングシステムを提供している。全国30か所のインキュベーション施設で経営相談にのるほか、同機構に登録した約3400人の中小企業診断士ら外部専門家を派遣。東京駅前の「ビジネス創発拠点TIP*S(ティップス)」や東京都東大和(ひがしやまと)市の「創業支援施設BusiNest(ビジネスト)」を運営し、新ビジネスの種や創業のアイデアを得られる場を提供している。中小企業の連鎖倒産を防ぐ「経営セーフティ共済」、小規模経営者の退職金制度である「小規模企業共済」、全国に9校の中小企業大学校などを運営。東日本大震災や熊本地震の被災企業に対し仮設施設整備などの復興支援も行っている。ただ会計検査院の調査(2017年3月末)では、同機構のファンドは投融資回収額と保有株評価額の合計が投融資額を下回って約55億円の損失状態にあり、産業革新投資機構を軸にした官民ファンドの統合・集約化の候補になっている。本部は東京都港区虎ノ門。地域本部制をとっており、全国に9地域本部がある。資本金は1兆1029億2128万8640円(2018年3月時点)。理事長は元トヨタ自動車専務の高田坦史(たかだひろし)(1946― )。役・職員数は756人(2018年4月時点)。
[矢野 武 2018年12月13日]