資本金(読み)シホンキン(その他表記)capital

翻訳|capital

デジタル大辞泉 「資本金」の意味・読み・例文・類語

しほん‐きん【資本金】

何か事を行う場合の元手。
出資者が企業に拠出した資金。以前は株式会社では、原則として発行済株式発行価額総額であり、商法上の法定資本にあたるものであったが、平成18年(2006)5月施行の会社法では、資本金の額は、原則として設立または株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払い込みまたは給付をした財産の額とされている。
[類語]資本資金元手元金財源キャピタル基金ファンド

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精選版 日本国語大辞典 「資本金」の意味・読み・例文・類語

しほん‐きん【資本金】

  1. 〘 名詞 〙 営利事業に投下された貨幣額。株式会社の場合は、株主の拠出額全額、すなわち発行済株式の発行価額の総額をいう。また、広く一般に、事をなすためのもとで。もときん。資本。
    1. [初出の実例]「会計官に於て預りたる、銀行の資本金は」(出典:米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉四)

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改訂新版 世界大百科事典 「資本金」の意味・わかりやすい解説

資本金 (しほんきん)
capital

個人企業では,純資産額(=資産総額-負債総額)のすべてが〈資本金〉として処理される。それは,事業主自身が投下している資本(資金)を意味し,過去の利益の蓄積分も含んでいる。したがって,個人企業の資本金額は事業主の意思と事業の成否とによってつねに変動する。これに対して,株式会社は株主の有限責任が保証された企業であるから,その資本金は,株主の有限責任の限度を基本的には明示する資本として法律(日本では商法)によって厳格に規定されており,この意味で法定資本legal capitalもしくは確定資本stated capitalとも呼ばれている。それは,株式資本金と組入資本金との二つから構成される。

 株式資本金とは,原則として株主が拠出した資本の総額(〈発行済株式ノ発行価額ノ総額〉(商法284条ノ2-1項))であって,株主の有限責任の限度を表すものである(企業それ自体の資金管理の観点を強調していえば,株主という資金源泉の一つから調達された資金にほかならない)。しかしながら,株主の拠出資本のすべてが資本金とされるとは限らない。たとえば,1株1000円で時価発行されるときは,1株当り500円(2分の1)までは資本金に組み入れず,資本金に準ずる資本として位置づけられる資本準備金株式払込剰余金)とすることができるからである(商法284条ノ2-2項,同288条ノ2-1項1号)。この場合,資本金は1株当り500円しか増加しないけれども,企業の資金調達の観点からいえば,1株当り1000円の資金が調達されたことには変りがない。つぎに,組入資本金とは,資本準備金または利益準備金を資本金に組み入れても,株式を発行せずにすました場合の資本金である(商法293条ノ3-1項,2項)。この場合,資本金は増加するけれども,その分だけ法定準備金が減少するので,企業の資金調達の観点からいえば,実質的な変化は生じていない,つまり新たな資金が調達されたわけではない,ということに注意しなければならない。資本金が増加する場合としては,いま一つ,株式配当の場合がある(商法293条ノ2)。それは利益配当の一形態であって,株式資本金は増加するけれども,その分だけ処分可能利益が減少するので,この場合も,組入資本金の増加の場合と同様に,資金の流れはまったく生じない。ただ,金銭による利益の配当の場合と比べると,資金の流出が節約されただけ,企業にとって有利であったといいうるにすぎない。しかし,株主の立場からみれば,株式配当は利益の配当として受け取るはずの金銭を新たに拠出したことを意味しており,その分だけ,株主の有限責任の限度が拡大したことになる。

 以上に述べた資本金の増加,すなわち増資の場合に対比して,資本金の減少,すなわち減資の場合は,株主の有限責任の限度が縮小することとなるので,商法は主として債権者保護の観点から減資を厳しく規制している(商法375条ないし380条)。減資の手続がとられるのは,通例としては,損失が累積し,欠損金(純資産額が資本金,資本準備金,および利益準備金の合計額を下回る額)が巨額になって,利益準備金と資本準備金とのいずれをもってしても塡補(てんぽ)しえず,減資を最後の手段としている場合である。減資によって差益が生じても,それは資本準備金(減資差益)として積み立てなければならない(商法288条ノ2-1項4号)。
資本
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「資本金」の意味・わかりやすい解説

資本金
しほんきん
capital

企業の貸借対照表の資本金勘定に計上された金額。個人企業であれば、資本金勘定は営業主が(追加)元入れした場合、決算で純利益を計上した場合に増加し、営業主が引き出した場合、決算で純損失を計上した場合に減少する。これに対して、株式会社の資本金は会社法の規制を受ける。株式会社の株主は有限責任であり、出資額を超えて責任を負うことがない。そのメリットを株主が享受することの代償として、法が会計に関与するのである。

 会社法は、設立または株式の発行に際して株主となるものが、当該株式会社に対して払込みまたは給付をした財産の額を資本金とすることを原則としている。ただし、払込みまたは給付にかかる額の2分の1を超えない額は資本金としないことができ、この資本金としないこととした額は資本準備金として計上しなければならない(会社法445条)。

 合併、吸収分割新設分割、株式交換または株式移転に際しては、法務省令に定めた額を資本金としなければならない(会社法445条)。具体的には会社計算規則第58条以下で規定されているが、基本的には合併等の契約で決めた額を資本金とすればよい。

 会社の設立に際しては、出資される財産の価額またはその最低額を定款に記載しなければならないが(会社法27条)、下限の定めがないので、資本金1円の会社の設立も認められると解される。

 会社設立後には、株主総会の決議によって資本金の額を減少し、その他資本剰余金の額を増加させたり(会社法446条)、資本準備金の額を増加させたりすることができる(会社法447条)。その場合、資本金の減少額について下限の定めがないので、資本金をゼロとすることも可能である。なお、資本金の減少には原則として債権者保護手続が必要である。

[万代勝信]

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百科事典マイペディア 「資本金」の意味・わかりやすい解説

資本金【しほんきん】

株式会社の会社財産維持の基準となる計算上の一定の数額をいう。株主が会社に払い込んだ資本のうち,法的手続で確立された額。会社の財産の基礎であり債権者に対して最低限度の担保となる。会社法では,設立または株式の発行に際して株主となる者が払込みまたは給付した財産の額が資本金とされるが,その額の2分の1を超えない額は資本金に計上せず資本準備金とすることもできる。また準備金等からの資本金への組入れも認められている。会計上は貸借対照表の貸方に計上される。組合企業,合名・合資・合同会社では出資金と呼ばれる。1990年の改正商法により,株式会社は1000万円,有限会社は300万円が資本金の最低限度とされたが,2005年の会社法により,資本金は払込価額を基準とすることとなり(445条),最低資本金の定めは削除された。
→関連項目自己資本資本資本利益率授権資本剰余金利益準備金

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「資本金」の意味・わかりやすい解説

資本金
しほんきん

会社財産を確保するために設定される一定の金額。会社の設立または株式の発行の際に株主となる者が,会社に対して払い込みまたは給付した財産の総額(会社法445条1項)。ただし,その 2分の1をこえない額は資本金とせずに資本準備金とすることができる(445条2,3項)。貸借対照表上の純資産額が資本金の額を上回る場合でないと株主などへ財産を分配することができない。会社法は,1990年の商法改正により導入された最低資本金制度を廃止した。株式会社合同会社において資本金は登記事項である(911条3項5号,914条5号)。

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知恵蔵 「資本金」の解説

資本金

株式会社の場合、その貸借対照表の貸方は負債と資本から成り立つ。そこでは企業の資産から負債を控除したものが資本(net worth:正味財産、純資産あるいは自己資本とも呼ばれる)であり、いわゆる資本等式(資産-負債=資本)が成立する。資本金とは、このような貸借対照表の資本の部のうちで、商法上の手続きを経て定められ、登記と貸借対照表で公示される法定資本金をいう。ただし、企業が定款で定めて発行する株式の総数(授権資本)を意味するのではない。これに関連して払込資本(paid‐in capital:拠出資本とも呼ぶ)というのは、株主が払い込んだ資本の一部で、資本金と資本準備金からなる。2001年6月の商法改正で額面株式が廃止され会社設立時に発行されるすべての株式が無額面株とされて、発行価額の2分の1以内の金額を資本金としなくてもよくなった。さらに、06年5月施行の新会社法では最低資本金制度が廃止され、資本金1円でも会社を設立し、続けることができるようになった。

(小山明宏 学習院大学教授 / 2007年)

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「資本金」の解説

資本金

出資者が企業に拠出した資金。商法では原則、株主の出資額を会社の資本金としているが、発行価額の2分の1以内は資本金としないとしている。これまでの商法では、最低資本金制度として有限会社で300万円、株式会社で1000万円の資本金が必要とされていた。しかし2006年4月から施行される会社法では、最低資本金制度が撤廃され、資本金1円でも会社を設立することが認められている。

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株式公開用語辞典 「資本金」の解説

資本金

株主が払い込んだ金額のうち、会社が資本金としたもの。株主より払い込まれた金額のうちで、会社が資本金としなかったものは株主払込剰余金となる。株主の有限責任を、株式会社の特質とすることから、最低限維持すべき純資産を示すことが要求されており、その基準となるのが資本金である。

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世界大百科事典(旧版)内の資本金の言及

【資本】より

…したがって,企業会計上の資本概念も,今日では資産,負債の各概念とともに,このような考え方のもとで規定されなければならなくなったわけである。 株式会社が作成する貸借対照表の資本の部には,現行の会計諸則のもとでは,大別して,(1)資本金,(2)資本準備金,(3)利益準備金,(4)剰余金,の四つの項目が記載されるのが通例である。これらのうち,(1)の資本金は原則として株主が拠出した株式資本金から構成され,(2)の資本準備金も株主が拠出した株式払込剰余金を主要な構成要素としているので,これら二つの項目は合わせて株主の拠出資本とみても大過ない。…

※「資本金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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