久方の・久堅の(読み)ひさかたの

精選版 日本国語大辞典「久方の・久堅の」の解説

ひさかた‐の【久方の・久堅の】

語義およびかかり方未詳。
① 「天(あま・あめ)」にかかる。
※古事記(712)中・歌謡「比佐迦多能(ヒサカタノ)(あめ)の香具山 利鎌(とかま)に さ渡る鵠(くび)
② 「天(あめ)」と同音の「雨」にかかる。主に上代の例に見られる。
※万葉(8C後)一一・二六八五「妹(いも)が門(かど)行き過ぎかねつ久方乃(ひさかたノ)雨も降らぬか其(そ)を因(よし)にせむ」
③ 「天」と類義の「空」にかかる。中古以降の用法。
※蜻蛉(974頃)上「ひさかたのそらに心の出づといへば影はそこにもとまるべきかな」
④ 天空にあるものとしての「月」、また「月夜」にかかる。
※万葉(8C後)八・一六六一「久方乃(ひさかたノ)月夜を清み梅の花心ひらけて吾が思(も)へる君」
⑤ (④から転じて) 時間としての「月」や、色の名「月毛」にかかる。
※康保三年順馬毛名歌合(966)「ひさかたのつきげそこより渡るとも天(あま)のかはらげ影とどめてむ」
⑥ 天空にあるものとして、天体の「日」に、天体に関係あるものとして「光」にかかり、転じて、時間としての「日」、「日」と同音を含む語や「昼」にもかかる。
※古今(905‐914)春下・八四「久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ〈紀友則〉」
⑦ 天空に関係のあるものとして、「雲」「雪」「霰(あられ)」にかかる。
※古今(905‐914)秋下・二六九「久方の雲の上にて見る菊は天つ星とぞあやまたれける〈藤原敏行〉」
⑧ 天上のものとして、「岩戸」や「織女(たなばたつめ)」などにかかる。
※曾丹集(11C初か)「ひさかたの岩戸の関もあけなくに夜半に吹きしく秋の初風」
⑨ 月の中に桂(かつら)の木があるという伝説から、「桂」および、それと同音の地名「桂」にかかる。
※新勅撰(1235)夏・一四三「ひさかたの桂にかくるあふひ草空の光にいくよなるらん〈藤原定家〉」
⑩ 「都」にかかる。永遠であるべきものとしての都をたたえてかかるか。
※万葉(8C後)一三・三二五二「久堅之(ひさかたの)都を置きて草枕旅ゆく君を何時とか待たむ」
[補注]「ひさかた」の語義については、「日射す方」の約とか、「日幸ひます方」の意、また、天の丸くうつろな形を瓠(ひさご)にたとえた「瓠形(ひさかた)」の意とする説などがあるが未詳。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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