主として身体外表の形態異常、醜形、欠損を治療し、形態的、機能的に正常に近く再建することを目的とした外科学の一分野で、形成再建外科plastic and reconstructive surgeryともいう。日本では当初「成形外科」と訳されていたため、今日でも整形外科と混同されることが多い。なお、プラスチックplasticはギリシア語のplastikos(造形)に由来する。またplastic surgeryの用語が一般化したのは、1838年ツァイスEdward Zeisにより初めて形成外科の教科書が出版されて以来のことで、日本における最初の教科書は82年(明治15)に小山内建(おさないたけし)(1848―85)がブルノBrunoの手術図譜を抄訳した『貌氏(ぼうし)成形手術図譜』である。
形成外科が専門分野として独立したのは近年で、1955年に第1回国際形成外科学会がスウェーデンのストックホルムで、火傷を主題として開かれた。日本では56年(昭和31)に三木威勇治(いさはる)(1904―67)が東京大学医学部内に形成特別診療班をつくり、58年に日本形成外科学会が発足、60年には東京大学と東京警察病院に形成外科が診療科目として誕生した。このときのスタッフは、おもに皮膚科、耳鼻科、整形外科、眼科の各医師で構成されていた。72年になって日本形成外科学会が日本医学会分科会として認められ、さらに医療法の改正で診療科として正式に認められ、行政面でも独立したのは75年になってからのことである。
日本の形成外科の先達である三木威勇治は「形成外科とは身体外表の形態異常や欠損を治療する外科で、形および機能を正常化する目的をもって同時に精神的劣等感を取り去る役目をもっている」と記しており、形成外科学会認定医の資格として必要な手術項目には、(1)熱傷、(2)皮膚腫瘍(しゅよう)・母斑(ぼはん)、(3)顔面外傷(骨折を含む)、(4)眼瞼(がんけん)、耳介、鼻、口唇、頬(ほお)を含む先天異常およびその他の疾患、(5)口唇・口蓋裂(こうがいれつ)、(6)瘢痕(はんこん)拘縮、瘢痕ケロイド、(7)手の外科、が含まれている。実際には、これらのほかにも、他科の医師との共同作業として、悪性腫瘍広範囲切除後の再建術なども行われている。
なお、形成外科で行われる形成手術そのものの歴史は古く、紀元前から行われていたことが知られる。
[水谷ひろみ]
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…J.リスターの画期的な消毒法の発見(1867)は,近代外科学に光明をもたらし,外科学は急速に進歩し,優秀な外科医が輩出した。各部門での専門化も高度となり,一般外科から整形外科,産婦人科,泌尿生殖器科,耳鼻咽喉科,眼科などが分化し,近年では脳外科,胸部外科などが,ごく最近では麻酔科,形成外科,小児外科などが独立することになった。
[最近の発達]
第2次大戦後の40年間の外科学の進歩には目をみはるものがあるが,これは無菌法,抗生物質の発見,麻酔法の発達,輸血・輸液療法の確立に負うところが大きい。…
…種々の手術器具が考案され,穿刺(せんし)による腹水の排除,傷の縫合,白内障,鼻骨の手術,膀胱結石に対する砕石術,腸閉塞に対する開腹術なども行われていた。当時鼻をそぐ刑罰を受けたものに対する造鼻術などは,インドの造鼻術として,その原理は今日の形成外科に生かされている。 しかしながら古い時代の医療は,いずれも経験だけによって築き上げられたもので,むしろ魔術的要素も多く,科学としての体系をもたなかった。…
…主として美容上の観点から外科的治療を行う医学の一分野。歴史的には形成外科から分離,独立した。形成外科plastic surgeryは先天性の奇形や外傷によって生じた変形を修復することを目的として外科的治療を行う外科の一分野であるが,その内容は,(1)欠失した組織や変形した部分を修復する再建または復形外科と,(2)あざや傷跡の修正,かぎ鼻の修正やしわとりといった醜形の修復をする美容形成外科に大別される。…
※「形成外科」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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