(野口勝三 京都精華大学助教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
隣接国または仮想敵国との間に緊張が高まり、相手国の戦力が脅威となる前に破壊したほうが有利と判断した側が、先制攻撃をかけ脅威を排除することをいう。典型的な例として、1967年にイスラエルが周辺のアラブ諸国の戦力増強が脅威であると判断し、なかでも最強の軍事力をもち、イスラエルとの国境に兵力を集結させたエジプトに対し先制攻撃をかけ、保有兵力とくに空軍を徹底的に破壊し、その後の戦闘を有利に展開した、いわゆる「六日戦争」(第三次中東戦争)がある。予防戦争は、類似の行為である奇襲攻撃、緊急避難、戦数(戦時非常事由)、自衛権の発動などと法的にも実質的にも区別しがたい。今日の戦争は高度な科学技術の導入によって短期間で雌雄が決せられることが多く、違法な予防戦争に訴える可能性は高くなっている。また核戦力のように秘密が厳守されている場合、単なる推定によって相手側を脅威とみなして予防戦争に出る場合も十分考えられ、第二撃能力(報復力)を保持することでこの種の戦争を防止しようとしているが、本質的には緊張の緩和・解消こそ最大の予防戦争防止手段であろう。
[藤村瞬一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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