二リン酸(読み)ニリンサンエン

化学辞典 第2版 「二リン酸」の解説

二リン酸(塩)
ニリンサンエン
diphosphoric acid(diphosphate)

酸:H4P2O7(177.98).オルトリン酸H3PO4 2分子から水1分子を除いた組成をもつ酸で,ピロリン酸とよばれていたが,現在の命名法では正しくない.2005年IUPAC命名法では,μ-オキシド-ビス-[ジヒドロキシドオキシドリン].無色の針状結晶またはガラス状固体.結晶には2変態があり,準安定状態は融点54.3 ℃,安定状態は融点71.5 ℃.オルトリン酸とP4O10またはPOCl3との反応によって得られる.水溶液は,二リン酸塩水溶液をH型イオン交換樹脂カラムに通しても得られる.分子の形は,2個の四面体型のPO4頂点のO原子を共有して結合した[(HO)2(O=)P-O-P(=O)(OH)2]である.固体は潮解性があり,水に易溶.解離第一段はかなり強い酸で,K1 0.14,K2 0.011,K3 2.1×10-7K4 4.1×10-10.水溶液は室温では徐々に,加熱すればすみやかに加水分解して,オルトリン酸になる.[CAS 2466-09-3].
塩:多くの種類の金属の塩が得られている.Na塩,K塩は工業的にも製造される.K塩はK4P2O7(330.35)[CAS 7320-34-5].水溶液から三水和物が析出する.2個のPO4が,頂点のO原子を共有して結合した形の [O3POPO3]4- を含む.P-O1.517 Å(末端),1.492 Å(架橋).∠P-O-P130°.水に可溶で,水溶液はアルカリ性である.各種の金属塩水溶液に加えると錯体を生じる.食品添加,水処理,洗剤医薬品農薬などに使用される.K塩には水素塩K2H2P2O7[CAS 14691-84-0],KH3P2O7[CAS 16270-75-0],K3HP2O7[CAS 16270-76-1]も得られている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の二リン酸の言及

【ピロリン酸(ピロ燐酸)】より

…化学式H4P2O7。二リン酸diphosphoric acidともいう。オルトリン酸H3PO4が脱水縮合してできる四塩基酸である。…

※「二リン酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android