仏教用語。五種の障害のことで,仏教では女性には生まれながらに五つの障(さわ)りがあるという。すなわち《法華経》に,女性は梵天王(ぼんてんおう),帝釈天(たいしやくてん),魔王,転輪聖王(てんりんじようおう),仏になることができない,と説かれている。女性がもっているこの五種の障害を,月の光をおおう霞や雲にたとえて五障の霞,五障の雲,また氷にたとえて五障の氷などという。女性差別につながる見方である。三従(さんしよう)(幼時は親に,結婚すれば夫に,老いては子にそれぞれ従う)と連用して,五障三従といわれる。また修道上の五つの障害を指す場合もある。その五障とは煩悩(ぼんのう)のさわり(煩悩障),悪業のさわり(業障(ごつしよう)),前業によって悪環境に生まれたさわり(生障(しようしよう)),前生の縁によって善き師にあえず,仏法を聞きえないさわり(法障(ほつしよう)),正法を聞いても諸因縁によって般若波羅蜜(はんにやはらみつ)の修行ができないさわり(所知障(しよちしよう))をいう。また,信,勤,念,定,慧の五善根にとってさわりとなる欺,怠,瞋,恨,怨の五つをいうこともある。
執筆者:伊藤 唯真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 女人禁制習俗の成立については,まず男性優位の社会・観念が確立し,女性の地位が相対的に低下したこと,また神意を伝えるという女性の宗教的な役割が形骸化したこと,さらに女性を不浄なものと説く仏教の解説などが結びついて成立したといえる。仏教では,《法華経要解》に〈梵王は浄行なり,帝釈は少欲なり,魔王は堅固なり,輪王は大仁なり,仏は万徳なり,しかるに女人は染多く,欲多く,懦弱なり,妬害なり,煩悩具足して皆上に反す,故に五障と名付く〉とあり,最澄臨終の遺言に〈女人の輩は寺側に近づくことを得ざれば,何に況んや院内聖浄の地をや〉とあるように,女性を修行の妨げになる存在と位置づけ,結界を設けて女性の立入りを禁じてきた。こうした考え方はとくに聖浄を重んじ苦行を旨とする山岳修行者に受け入れられ,修験道の隆盛や山岳信仰の発展とともに広く普及したのである。…
※「五障」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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