転輪聖王(読み)テンリンジョウオウ

デジタル大辞泉 「転輪聖王」の意味・読み・例文・類語

てんりん‐じょうおう〔‐ジャウワウ〕【転輪聖王】

転輪王」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「転輪聖王」の意味・読み・例文・類語

てんりん‐じょうおう‥ジャウワウ【転輪聖王】

  1. ( [梵語] Cakravarti-rāja の訳語 ) 仏語四天下を統一して正法をもって世を治める王。輪宝戦車のようなもの)を転じて敵対するものを降伏させるところからこの名があるが、輪宝の種類(金・銀・銅・鉄)によって金輪王ないし鉄輪王の差があり、その統治する世界にも四州ないし一州の差がある。また、輪宝のほかに六宝を有し、身に三十二相をそなえ、出世間の仏と対比される。これらの王が出現するときについては、金輪王は人間の寿命が無量から八万歳の間に出現し、鉄輪王は人寿一〇〇歳のとき、他はその間で一定しないという。転輪王。輪王。転輪。
    1. [初出の実例]「閻浮提内転輪聖王出現世時」(出典十住心論(830頃)二)
    2. [その他の文献]〔金剛経〕

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改訂新版 世界大百科事典 「転輪聖王」の意味・わかりやすい解説

転輪聖王 (てんりんじょうおう)

古代インドの伝記上の理想的帝王のこと。単に転輪王または輪王ともいう。この王が世に現れるときには天の車輪が出現し,王はその先導のもとに武力を用いずに全世界を平定するとされるところから,この名がある。サンスクリットのチャクラバルティンCakravartinまたはチャクラバルティラージャCakravartirājaの訳。仏典では,この王は輪宝,白象(びやくぞう)宝,紺馬(こんめ)宝などの七宝を有し,また仏と同じ〈三十二相〉(32の身体的特徴)を備えているとされ,世俗世界の主として,真理界の帝王たる仏にもたとえられる地位を与えられている。実際,釈尊がその誕生のときに,出家すれば仏となり,俗世にあれば転輪聖王となるであろうとの予言を受けたというのは,よく知られた伝説である。しかし,歴史的にはこの転輪聖王は,釈尊より後のインド統一帝国の帝王のイメージが投影されたものであろうと考えられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「転輪聖王」の意味・わかりやすい解説

転輪聖王
てんりんじょうおう
cakravartin

統治の輪を転がす王の意。インドのジャイナ教徒,ヒンドゥー教徒,仏教徒の間で考えられていた武器を用いず正義だけで世界を統治する全世界の理想的帝王である。仏教では,この王は三十二相という瑞相をそなえ,七宝 (輪,象,馬,珠,女,居士,主兵臣) をたずさえ,四徳 (長寿,無病息災,好顔,宝が蔵に満つ) を兼備するとされる。仏典では仏の代名詞とされることがある。また仏の説法を輪宝を転がすのにたとえ,転法輪という。

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世界大百科事典(旧版)内の転輪聖王の言及

【インド】より

…その中でマガダ国は近隣諸国を併合して最も有力な国家となり,その国家体制を完成させたのがマウリヤ朝の古代統一国家である。この発展過程で,ヒマラヤから大洋に至る広大なインド亜大陸はひとつの世界として意識され,ひとりの国王(チャクラバルティンCakravartin,転輪聖王(てんりんじようおう))が支配するのが理想とされた。だがマウリヤ帝国以後,グプタ帝国などの強大な王国が見られたが,南北インドを統一支配するヒンドゥー国家は出現せず,諸王朝の分立割拠が一般的状況となり,各王朝はそれぞれ地方の社会と文化と密着したものとなった。…

【優曇華】より

…ウドゥンバラは学名をFicus glomerata Roxb.といい,クワ科に属する植物でイチジクの1種であるが,花がくぼんだ花軸の中にあって,外からは見えない。このためインドの伝説では,3000年に1度しか花を開かない,あるいは,如来や転輪聖王(てんりんじようおう)が出現した時だけ花を開くといわれた。仏教の経典では仏や仏の教えに遭いがたいことのたとえとして常套的にこの語が用いられている。…

※「転輪聖王」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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