軟体動物頭足類の雄の一定の腕が,交接に際し雌に精莢(せいきよう)spermatophore(精包ともいう)を渡す目的のため変形しているものをいう。生殖腕または化茎腕ともいわれる。八腕形類では右第3腕の場合が多く,十腕形類では右または左(または両側)の第4腕の場合が多い。アミダコやカイダコなどでは交接後この腕が切れ,雌の外套腔内に残っていて虫のように動くので,これをG.L.キュビエは寄生虫と思いヘクトコチルス(百疣虫(ひやくいぼちゆう))と名づけたところから現在も交接腕はそう呼ばれている。これらの類では交接腕は矮小な雄の全体の大きさに比し特大で,未熟のうちは皮囊に包まれているが,交接時に皮囊が破れ,一部があたかも推進用の尾をもった精莢運搬器官のように切離する。この器官は再生しないものと思われる。他の頭足類ではこのように切離する例はなく,マダコ類では交接腕の先端はスプーン状になっているし,ヤリイカ類では交接腕の先端半分の吸盤が無く肉嘴(にくし)列となっている。これらの変形は未成体期から見られ,性成熟と関係はないが,性成熟に達するといっそう顕著となる。オウムガイ類では4本の触手が特化していてユリの球根様となっていて,とくにspadixと呼ばれている。
執筆者:奥谷 喬司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
軟体動物門頭足綱に属するイカ、タコ類の雄が、生殖に際して雌に精莢(せいきょう)を渡すためにもつ、特別の形態に変化した1本または2本の腕のことで、化茎腕ともいう。種によって、変形する腕と変形の形式は一定である。たとえばヤリイカでは左第4腕の先端2分の1ほどの吸盤が欠落して肉嘴(にくし)状に変わっている。アミダコの交接腕は、精莢を雌に渡すとき雄の体から切れて雌の体内に残る。これを最初に発見したフランスの博物学者キュビエが、これを寄生虫と思いヘクトコチルス(百疣虫(ひゃくいぼちゅう))と名づけたところから、以後その名でよばれている。
[奥谷喬司]
…雌雄同体のものではこの両者を備え,さらに受精囊へ直接通じる交尾孔が開口しているものもある。頭足類では,ふつう腕の1本が変形して交接腕となり,貯精囊の中で作られる精子を入れた精包を雌の外套腔(がいとうこう)内に移し入れる。そのとき腕の一部も切れて精包を保持するものもある。…
…腕の環の中央には俗に〈からすとんび〉といわれる大きくて鋭い顎板(がくばん)からなる口器があり,口腔内には歯舌(しぜつ)をもつ。
[生態]
タコはすべて雌雄異体で,雄は右または種によっては左の第3腕が,精莢(せいきよう)(精子を包むふくろ)を雌の外套腔に挿入する役をする交接腕に変形していて,先端は舌状ないしは葉状になっていて,対の腕より短いのがふつうである。アミダコ科やフネダコ科では雄は雌の1/20くらいの大きさしかない矮小雄(わいしようゆう)であるが,交接腕は長大で,先端がむち状になっており,精莢を渡すための交接に際しては交接腕は切れて雌の体内に残る。…
※「交接腕」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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