立野信之(読み)タテノノブユキ

デジタル大辞泉 「立野信之」の意味・読み・例文・類語

たての‐のぶゆき【立野信之】

[1903~1971]小説家千葉の生まれ。軍隊での生活を経てはじめプロレタリア作家として活躍するが、検挙された後は転向現代史題材とした作品を執筆した。「叛乱はんらん」で直木賞受賞。「友情」は転向文学の先駆けとされる。他に「明治大帝」「軍隊病」など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「立野信之」の意味・わかりやすい解説

立野信之
たてののぶゆき
(1903―1971)

小説家。千葉県に生まれる。私立関東中学中退。山田清三郎らと『新興文学』を創刊(1922)。のち2年間の軍隊生活を経たが、このときの体験をもとに『標的になつた彼奴(あいつ)』『軍隊病』(ともに1928)などの小説を発表、プロレタリア作家としての地位を築いた。その後『戦旗』編集長、ナルプ日本プロレタリア作家同盟書記長などを務めたが、やがて転向、転向小説の先駆けともなった佳作『友情』(1934)を発表した。第二次世界大戦後は、現代史に取材した小説を書き継ぎ、『叛乱(はんらん)』(1952~53)、『太陽はまた昇る――公爵近衛文麿(このえふみまろ)』(1953)、『明治大帝』(1956~58)その他を発表したが、とくに二・二六事件を描いた『叛乱』は第28回直木賞を受賞した。

[大塚 博]

『『日本現代文学全集69 プロレタリア文学集』(1969・講談社)』『『現代日本文学大系91 現代名作集 一』(1973・筑摩書房)』『立野信之著『青春物語・その時代と人間像』(1962・河出書房新社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「立野信之」の意味・わかりやすい解説

立野信之
たてののぶゆき

[生]1903.10.17. 千葉,五井
[没]1971.10.25. 東京
小説家。中学校中退後,農業同人誌発行などをしていたが,1924年入営,軍隊生活の体験に基づく『標的になつた彼奴』 (1928) でプロレタリア文学の新しい領域を開いた。 28年『戦旗編集委員,30年日本プロレタリア作家同盟書記長。同年検挙され,転向文学として代表的な『友情』 (34) を発表。ほかに『太陽はまた昇る』 (51) ,『昭和軍閥』 (63) など。二・二六事件に取材した『反乱』 (52) で直木賞受賞。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「立野信之」の解説

立野信之 たての-のぶゆき

1903-1971 昭和時代の小説家。
明治36年10月17日生まれ。軍隊体験をもとに昭和3年「標的になつた彼奴(あいつ)」「軍隊病」などを発表,プロレタリア作家として活動。6年転向し,転向文学の先駆けといわれる「友情」を執筆する。28年「叛乱(はんらん)」で直木賞。芸術院会員。昭和46年10月25日死去。68歳。千葉県出身。関東中学中退。作品はほかに「明治大帝」「昭和軍閥」など。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android