仕立収穫法(読み)したてしゅうかくほう

改訂新版 世界大百科事典 「仕立収穫法」の意味・わかりやすい解説

仕立収穫法 (したてしゅうかくほう)

仕立法と収穫法のことで,クワの樹形を管理しその葉を収穫する方法をいう。

クワは高木性であるが,収穫を容易にし,毎年均一な収穫量をうるためには,樹形を一定の形にととのえ,多くの枝を発生させる必要がある。このための方法を仕立てと呼んでいるが,仕立法には一定の高さで毎年枝を切り戻し,株にこぶし状に肥大した拳(けん)をつくる拳式仕立てと,枝を切り戻すときに一定の長さの枝を残して切り,拳をつくらない無拳式仕立てとがある。また主幹の高さにより根刈仕立て(30cm以下),高根刈仕立て(50cm以下),中刈仕立て(1m以下),高刈仕立て(1m以上)に分けられる。この仕立法は地域によって異なり,東北地方では中刈りや高根刈りが多いが,関東以西になると根刈りの割合が多く,とくに九州地方では中刈りはまったくみられない。東北地方に中刈りが多いのは,クワの生育期間が短いため,一株の枝数を多くし,カイコの飼育時期に合わせて枝の間引き収穫を行い,収穫量を多くするためであるが,収穫に多くの労力を要することや,機械による収穫には適していないので,しだいに根刈りの割合が多くなっている。根刈仕立ての特徴は,植付け後比較的短期間で収穫ができるだけでなく,株の高さが低いため収穫が容易であることなどである。しかしその反面,樹勢が比較的早く衰え,胴枯病や萎縮病などの発生が多く,水害凍霜害などの被害を受けやすい。

収穫法はカイコの齢期,飼育方法,飼育時期などによって異なるが,齢期との関係では稚蚕用クワ収穫と壮蚕用クワ収穫に分けられる。前者には春蚕期では全芽をかきとる摘芽収穫と葉のついたまま切り取った枝ごと収穫する条桑収穫がある。夏秋蚕期では古い枝に芽を残す古条残芽や摘梢(てきしよう),摘梢摘葉などの処理を施した稚蚕専用桑園を設け,処理後,発芽してきた芽や葉の収穫および条桑収穫などを行い,できるだけ均一な稚蚕用クワの収穫につとめている。後者は古くは春蚕期の条桑収穫,夏秋蚕期の摘葉収穫であったが,現在では年間条桑育が広く普及している。壮蚕用クワの収穫法としては,夏切法,春切法,輪収法などが基本であって,これに枝の伸びの状態とカイコの飼育時期を考慮したいくつかの方法がある。夏切法は春,初秋および晩秋の各蚕期に収穫するが,春切法は夏,晩秋および晩々秋の各蚕期に収穫する。輪収法は一つの桑園を二つに分け,夏切りと春切りを交互に行う。

条桑収穫は鎌や剪定せんてい)ばさみなどによって行われてきたが,収穫に多くの労力を要するばかりでなく,重労働でもあるので,条桑を収穫する機械が開発された。耕耘機にバリカン型の刈取機を取り付けたものが普及しているが,これは一人で操作ができ,株の片側を刈り取ってゆき,人力の場合にくらべ3~4倍程度の能率があがる。株をまたいで収穫する刈取機もあり,能率はあがるが,高価なため集団桑園などのように広い面積でないと利用は難しい。また,密植桑園用に改良されたバインダーでは10aを1時間程度で収穫でき,今後密植桑園が多くなるにつれ普及すると思われる。
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