固くなった耕地の土壌を細かく耕す作業(耕耘作業)を行う農業機械。耕耘装置のみならずエンジンや走行装置をもち,自走しながら耕耘作業を行う。動力耕耘機とも呼ばれる。運搬など他の作業にも利用できるようになっており,小型トラクターの一種といえる。4輪で走行する乗用型もあるが,通常は2輪の走行型である。
耕耘機の構造は,機体の前部にエンジンをのせ,クラッチ,減変速機を介して車輪を駆動するとともに,後部の耕耘装置に動力を伝え,毎分200~400回転する耕耘刃で土を切削し,細かく砕くものである。石油エンジンまたはディーゼルエンジンを搭載し,その出力は3~10PS(メートル馬力)の範囲である。とくに5PS以下の軽量で汎用(はんよう)性にとむ構造のものはティラー型耕耘機と呼ばれ,栽培管理作業や砕土作業によく用いられる。この場合,車軸にローターrotorと呼ぶ回転作業機をつけて,走行と土を耕す作業を同時に行う構造をとっている。運搬作業のときはローターをはずし,通常の車輪をつける。5PSをこえる通常の耕耘機では,車軸とは別に機体後部につけられた耕耘軸に耕耘刃がつけられており,走行と耕耘は独立に行われる。一般の耕耘機は耕耘軸が水平であり,ロータリー耕耘機と呼ばれる。これに対し,耕耘軸が垂直なスクリュー型やクランク機構を用いた型のものもかつて使用された。ロータリー耕耘機の耕耘刃には通常なたづめ(爪)と呼ばれる側方に湾曲した刃が用いられる。しかし左右対称形の普通づめや外国製にみられるようなL形づめを使用することもある。
耕耘機は大正時代にスイスやアメリカから輸入した機械を,日本で水田作業に適合するよう改良を重ね,昭和10年ころから一部の地域で実用に供され,普及し始めたものである。しかし技術的に完成し,本格的に普及したのは第2次大戦後で,とくに1950年代になってからである。ティラー型耕耘機は1952年にアメリカから輸入したきわめて小型のガーデントラクターの一種メリーティラーMerry-tillerを原型として,日本の水田で使えるよう改良,実用化したものである。その後日本では耕耘機が急速に普及し,1967年には300万台をこえ現在に至っている。このように水田用に開発された日本式の耕耘機は,アジアの水田地帯でも数多く使われている。
ロータリー耕耘機は1回かせいぜい2回の作業で,固まった土を耕し,播種(はしゆ)床を用意することができるためきわめて便利である。能率は8PS級,耕幅65cmで0.1ha/h程度である。ロータリー耕はプラウ耕のように土壌を完全には反転せず,かくはんする。したがってプラウの反転耕に対し,かくはん耕と呼ばれることもある。
→農業機械
執筆者:木谷 収
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…(1)機械化と農薬の使用 農業機械化の動向を概括しよう。耕耘過程の機械化は,戦前期に自動耕耘機と呼ばれた歩行型(使用者は歩く)のもので始まった。これも限られた高生産力地帯や地主経営に限られた。…
…営農作業は整地耕耘(こううん)作業から,収穫調製作業などまで数段階に及ぶため,機械の種類が多い。用途別にみると,整地耕耘用機械(装輪式トラクター,動力耕耘機など),栽培用機械(田植機,野菜苗移植機など),管理用機械(噴霧機,散粉機など),収穫調製用機械(稲麦刈取機,刈払機,コンバイン,脱穀機,籾すり機,乾燥機など),飼料用機械(飼料さい断機など),穀物処理機械(精米麦機,製粉機械,製めん機など),製茶用機械などがある。日本の1997年の農業機械の生産額は6024億円で,そのうち装輪式トラクター(2194億円),動力耕耘機(318億円),田植機(532億円),コンバイン(1526億円)などの占める割合が高い(通産省〈生産動態統計〉による)。…
※「耕耘機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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