漁民の共同漁獲物,あるいはその販売収益を分配する際,代(しろ)という分配単位を用いて勘定することをいう。代分けは古くからの地先漁業にみられる漁獲物の伝統的な分配慣行であり,ほとんど現物をもって行われた。分配単位である代は,もともと大化改新以前の農業で土地分配単位を示す言葉として通用していたものが,漁獲物の分配単位に転用したものといわれる。したがってその歴史は古い。代という言葉は,東北から紀伊の太平洋岸で多く使われているが,その同義語には能登などの日本海岸や四国で使用されている歩(ぶ),九州以南で使用されているタマス,ほかにアタリ,メーテなどがある。
各地の漁村で行われる代分けには,漁業組織,漁労実態,漁民の生態を反映してさまざまの形態がみられる。まず漁法,組織に関係なく全村的規模で行う共同漁労(地下網(じげあみ),村張り)では,直接の漁業従事者と否とにかかわらず,村民全員に人頭割,戸数割で平等分配された。この形態には寺社への配当や労働力確保を目的とした幼年者への配当(岡役代)がみられることが多い。さらに平等分配という点では同じであるが,網漁,釣漁に特徴的な直接の漁業従事者(浜方,漁師)だけで操業する共有漁労の形態では,船,網が人別に数えられ,船代,網代の名で所有者に分配される。さらに網漁に顕著な経営漁労の形態で,それが親方・子方,網主・水主,地頭・名子などの主従関係,隷属関係によって組織される場合の分配方法は漁業諸経費の扱い方に基づくものが多く,(1)経費天引後における親方・子方の分配,(2)経費の親方負担とそれに伴う配当の親方先取,その後の子方間平等分配と差等分配などである。この子方間の差等分配は魚見役,船頭などの職能・熟練度に応じて行われた。こうした代分けは,不安定な漁業生産のもとにあって,損益の平等負担を原則に漁民の生活と糧を保持するために採用された分配方法で,その理念は資本制漁業経営における歩合制,賃金制にも継承されている。
執筆者:田島 佳也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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